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 連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜) 

テレビやスマホに流れてくる、政治や国際関係のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?

この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します! ご意見・ご感想はXのハッシュタグ #ニュース解体中 でお寄せください。


まずはちょっとしたクイズから。

日本・アメリカはともかく、フランスに首相と大統領が両方いるのは意外だっただろうか?

そして今のクイズには正解できた方も、この問いにはっきり答えられるだろうか。

首相がいる国、大統領がいる国、両方いる国には、どんな違いがあるのか?
そもそも「首相」と「大統領」は何が違うのか?

この違いがわかると、ニュースの「〇〇首相」や「▲▲大統領」の動向を見たときに読み取れるものも変わってくる。素朴に違いが気になる方にも、ニュースを深読みしてみたい方にとっても興味深いトピックのはずだ。

首相と大統領は“選ばれ方”が違う

「これ」と言い切れる1つの答えがあるわけではないが、大統領は「国民」が選び、首相は「議会(議員たち)」が選ぶという“選ばれ方”は大きな違いだといえる【※注釈】

「誰が選んだか」の違いで、何がそんなに変わるのか?

学校のクラスで、学級委員長を決めるシーンを思い浮かべてみてほしい。クラス全員の投票で決まった委員長と、先生たちが「はいあなた」と指名した人とでは、置かれる立場や他の生徒からの見え方も変わってくるはずだ。

何が言いたいかというと、選ばれ方次第で「その人にどんな権限が与えられて、誰に対して責任を負うのか」が変わるということだ。

※「大統領が議会から指名される」国など、例外も少なからずあります。
この記事では「首相」「大統領」の大まかなイメージをつかんでいただくため、主に「日本の首相」と「アメリカの大統領」を例に解説しています。

大統領は「国民が選ぶ」

アメリカの場合、大統領は国民の投票でほぼ直接選ばれる。アメリカには「選挙人」という少し複雑な仕組みがあって厳密には間接的だが、その選挙人たちは担当する地域の投票結果に従うだけなので、実質的には「国民がその人を選んでいる」と理解して差し支えない。

▲詳しくはこちらの記事をご覧ください

首相は議会が選ぶ

首相の選ばれ方はもう少し遠回りだ。日本の首相なら、

国民が選挙で国会議員を選ぶ → 議員たちが集まった議会(国会)が首相を選ぶ

という2段階の方式になっている。

▲国会で首相指名を受けた、高市現首相

立ち位置は同じだけど……

ここでおさらいしたいのが、中学の公民の授業でも習う「三権分立」だ。

▲日本における三権分立。「立法」「行政」「司法」の三者が、互いにチェックし合っている

特定の人や組織に力が集中しないよう、国の仕事を3つに分けるという考え方が「三権分立」。法律をつくる立法(日本なら国会)、裁判をする司法(裁判所)、法律をもとに日々の国の仕事を進める行政(内閣)の3つだ。この3つがお互いを監視し合うことで、国家が暴走するのを防いでいる。

首相も大統領も、この「行政」のトップにあたる。立ち位置は同じだが、三権分立の枠組みの中での振る舞い方はけっこう違う。そしてその違いを生むのが、「選ばれ方」の違いだ。

大統領は「1人」、首相は「チーム」

アメリカのような大統領制の国は、「三権」が厳格に分かれているのが特徴だ。

大統領は国民から直接選ばれている分「みんなが認めてくれた」というお墨付きが強く、行政の仕事をたった1人で背負うことが許される。アメリカの憲法にはこう書いてある:

The executive Power shall be vested in a President……
(行政権は、大統領に属する)

U.S. Constitution, ArticleⅡ, Section1, Clause 1.

大統領は議会(立法の担い手)が可決した法案に対して「拒否権」を行使できるし、議会に大統領をクビにする権限はない。政権を支える閣僚たちはあくまで大統領の「部下」で、すべての権力は1人の大統領に集まっている。

一方、議会から選ばれた首相は、1人で行政を背負うことはない。日本の場合、行政の担い手は「内閣」というチームのものだ。

行政権は、内閣に属する。

日本国憲法第六十五条

内閣には大臣(英語で“Minister”)がたくさんいて、そのリーダーが首相。英語では“Prime Minister”、つまり「大臣たちの筆頭」であって※1チームメイトと肩を並べるキャプテンというイメージが近い。

ニュースでも……

アメリカ大統領が何らかの決定を下したとき、ニュースで大写しになるのはたいてい大統領が(ひとりで)「大統領令」に署名する様子だ。こんな写真に見覚えがあるかもしれない。

▲大統領令に署名するトランプ大統領

日本の閣議で何かが決まったら、閣僚が横並びで記念撮影をするのがおなじみだろう。首相が単独で画面に映るときも、基本的には「内閣の代表者」という位置づけだ。こうした取り上げ方の差にも、首相と大統領の性格が端的に表れていると言えるかもしれない。

▲内閣の閣僚たちが横並びで並ぶ場面(岸田内閣時代)

首相「ほぼ毎日」議会へ 大統領は「年1回」

日本の首相は国会の会期中、ほぼ毎日のように国会に出て、議員からの質問に答え続けるのが常識だ。答弁する首相の姿がニュースで流れる日も少なくない。

一方、アメリカの大統領が議会に出向くのは基本的に年1回。内政や外交などの方針を表明する「一般教書演説」※2のときくらいだ。

何もサボっているわけではなく、首相の「生みの親」は議会なので議会に説明する義務がある、大統領の「生みの親」は国民なので議会に説明する義務がない、という理屈だ。もちろん大統領がまったくノーチェックということはなく、アメリカでは閣僚の任命に議会の承認が必要になるなど、むしろ監視の仕組みはしっかりと組み込まれている

「どちらが偉い」ということではなく、各国が「どうすれば権力の暴走が起こらないか」を工夫し、結果的に異なるアプローチに行き着いた……それが、首相と大統領というシステムの違いだ。

ここからは更に深掘り。アメリカが「首相」でなく「大統領」のシステムを採用した理由は? そしてフランスに「首相と大統領が両方いる」のはなぜ?

次ページ:首相と大統領、なぜ2つの仕組みが生まれたの?


※1^そもそも「首相」という言葉が「席宰」から来ている。日本では総理(内閣総理大臣)と呼ぶのが正式ではあるが、よりイメージがつかみやすいのは「首相」というワードの方かもしれない。

※2^一般教書演説(State of the Union Address)。大統領が連邦議会に国の現状や重要課題を伝える演説で、通例は年に1度(多くは1〜2月)行われる。

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この記事を書いた人

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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