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 連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜) 

テレビやスマホに流れてくる、政治や国際関係のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?

この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します! ご意見・ご感想はXのハッシュタグ #ニュース解体中 でお寄せください。

今月(2026年6月)15〜17日、フランスのエビアン※1という街でG7ジーセブンサミットが開催される。

G7とは「Group of 7」の略。アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・日本の「主要7カ国」と、EU(欧州連合)のトップが集まる国際会議だ。

▲2018年のG7サミット。日本の安倍首相(右手前、当時)らが円卓を囲んだ

国の並びを見るだけでも「とても大事な会議」という雰囲気は伝わると思うが、実際どんな話し合いが行われていて、どこに注目すればいいのかは、ニュースをかなり丁寧に追わないと見えてこない部分だ。

今回は、実は重要な「フランス開催だからこそ」の見どころと、ニュースを身近に感じるための日本政府の動きを中心に紹介していきたい。

「G7」基本のキ

まずはG7サミットの基礎知識から。そもそも「G7」は、どんな理由で先述の7カ国と決められているのか?

G7はすごく簡単に言うなら、「世界で最も経済力のある国の集まり」だ(あるいは、「だった」)。

第1回G7サミット(1975年)は世界的な不況への対処を話し合うために開催され、当時最もお金持ちで、かつ「自由主義」「民主主義」といった価値観をおおむね共有する国々が集められた。

▲第1回サミットの参加国はアメリカ・イギリス・イタリア・西ドイツ(当時)・フランス・日本。翌年にカナダが加わった

その後も冷戦・テロ・環境問題などさまざまな課題が浮上するたび、「大きな国が定期的に話し合える場があったほうがいいよね」という思惑のもと、ほぼ毎年サミットが開催されてきた。ロシアが加わり「G8」となった時期を挟み(2014年のウクライナ領土侵害を受けて参加資格停止)、現在は再び「G7サミット」として催されている。

なお最近のG7サミットでは、その年の議題に応じて招待国(アウトリーチ国)が加わることも多い※2。たとえば2023年の広島サミットでは、ロシアの侵攻を受けたウクライナのゼレンスキー大統領らも招かれている。

「G20」との違いは?

G7とともにニュースでよく取り上げられるのが、例年秋頃に開催される「G20サミット」だ。こちらは新興国も含めて世界の主要20カ国・地域による、いわば“世界の縮図”のような会議。地球規模の課題に取り組みやすい一方、多様な考え方の国々が集まるので、足並みが揃いにくい側面もある。

▲2025年のG20サミット。参加国数の多さは一目瞭然

その点G7はコンパクトな会合で、強力なメッセージを打ち出しやすい……いわば「ブランド力」をもつという強みがある。サミット閉幕時には7カ国共同で、世界に向けた首脳宣言が出されるのが恒例だ。

くせ者「フランス」が開催国

G7の基本がわかったところで、今年のサミットの注目ポイントに移ろう。

G7サミットで意外なほど重要なのが、招待する国を決め、会議を主導す開催国のカラーだ。今回のホストであるフランスは、歴史的にアメリカ寄りの立場をとりながらも、独自路線で動くことが少なくない。

フランスといえば、「フランス人にいきなり英語で話しかけると冷たい対応をされる」……なんてイメージもあるだろうか。それはジョークの類にしろ、自分たちのスタイルを大切にする国なのは確かで、それは政治の世界でも同じだ。たとえば2003年にアメリカが踏み切ったイラク戦争では、イギリスや日本がアメリカに協力する一方、フランスは強硬に不参加を貫き、主体性を印象づけている。※3

▲フランス軍を構成する「国家憲兵隊」

そして今回、フランスとアメリカで意見が割れそうなテーマのひとつが、AI(人工知能)に関するルール整備だ。

フランスをはじめヨーロッパの国々は、「新技術には厳格なルールを」と考える傾向にある。「世界で最も厳しい個人情報保護法」ともいわれるEU域内の法令、「GDPR(一般データ保護規則)」はその最たる例だ。

一方のアメリカはOpenAI(ChatGPT)やGoogle(Gemini)といった企業を抱える、AIを「生み出す」側の国。「自由の精神でどんどん作ろう」というスタンスが基本で、厳格な規制には消極的とみられる。

▲Googleの本社。Google Geminiのお世話になっている方も多いだろう

フランスのマクロン大統領はいわゆる「宙吊り議会」(どの政党も単独で過半数の議席を獲得できていない状態)に陥るなど国内情勢が苦しく、国際社会の中で「フランスここにあり」をアピールして求心力を高めたい状況にある。※4となると、フランスとアメリカの温度差が、サミットでの紛糾という形であらわになる可能性も否定できないのだ。

▲サミットをアピールの場にしたい、フランスのマクロン大統領

日本が、フランスとアメリカをつなぐ?

そんなフランスとアメリカのあいだを取り持てる可能性があるのが、「アメリカともヨーロッパとも話せる」立場の日本だ。

日本政府とアメリカのトランプ大統領の関係は、現時点では良好と見られている。さらにフランスのマクロン大統領・イタリアのメローニ首相など、今年に入ってからG7の首脳クラスの来日も続いており、ヨーロッパ側ともコミュニケーションが取れている

▲来日したトランプ大統領(2025)。現状、日本との関係はおおむね良好だ

ヒントは「ドラえもん」?

日本から出席する高市首相が、AI関連政策に深く携わってきた点も重要だ。岸田・元首相が立ち上げた「広島AIプロセス」(AIを安全・公正に活用していくための国際的な枠組み)の拡大をはじめ、「安全、安心で信頼できるAI」の実現に向けて取り組んでいる。

漫画・アニメの『ドラえもん』※5や家庭用ロボット「LOVOT」のヒットに象徴されるように、日本は新技術にほどよい“温かみ”を与え、親しみやすくするのが得意なお国柄でもある。アメリカが納得できるAI規制の妥協案をヨーロッパ側に提案するなど、日本が「調整役」として振る舞うかどうかに注目したい。

集合写真の「立ち位置」にも注目

最後に、サミットあるあるの小ネタを紹介。G7サミットでは最終日に集合写真を撮るのがおなじみなのだが、実は首脳たちの並び方には“暗黙のルール”がある。

まず真ん中に立つのは開催国のトップ。次いで地位の高い人ほど中央寄りに並ぶ慣習があり、G7内では肩書が「大統領」の人が「首相」より上にくる約束だ。細かな解説は今後の記事に取っておくが、「大統領は首相より権限が強い」という通例が反映されている。※6

▲広島サミットでは岸田首相が真ん中。マクロン大統領(フランス)とバイデン大統領(アメリカ)が脇を固め、各国の首相・EU首脳が続いた(肩書は当時)

今回のサミットでも、ぜひニュースサイトなどに載る写真に注目してみてほしい(たとえば、今回の出席者なら高市「首相」はどの位置に立つだろう?)。国どうしの関係性が、意外な並び順から見えてくることもある。

まとめ

世界をリードする強力なメッセージの発信が期待されるG7サミットだが、今年は2年続けて首脳宣言の採択が見送られる見通し、との報道も出ている。やはり、アメリカと他の参加国の意見がまとまりきらない、というのが大きな理由だ。

開催国としては痛恨の展開だが、そんな中でフランスがどこまでリーダーシップを発揮できるか? そして日本が“橋渡し役"としてどんな働きをするか? ぜひこの2つに注目して、ニュースを眺めてみていただきたい。


※1^ 赤い字で「evian」と書かれたボトルのミネラルウォーター、あの「エビアン」である。

※2^韓国やオーストラリアは「アウトリーチ国」の常連で、アメリカ有数の研究機関・戦略国際問題研究所(CSIS)から「将来的に『G9』に拡大すべき」という提言もなされている。背景には、中国など新興国の台頭で「G7」がかつてほどの支配力を失っており、拡大しないことにはG7以外からの反発もある……という事情もあるだろう。

※3^フランスには、20世紀の大統領の名にちなむ「ド・ゴール主義」という考え方が根付いている。外国の影響力から距離をとり、自国の独自性を追求して「偉大であろう」とする思想だ。

※4^フランスには大統領と別に、内政を担当する首相が存在するが、その首相が短期間で交代するなど政権運営が不安定になっている。来年(2027年)の大統領選を前に、マクロン大統領と対立する右派政党も支持を伸ばしており、マクロン氏は「グローバルに開かれたフランスを作っています」というイメージを国内外に発信したいはずだ。

※5^『ドラえもん』は、ある意味でとても日本的なコンテンツといえる。たとえばアメリカでは「自分で考えることもさせずに、子どもに答えを与えてしまう存在は教育上よくないのでは?」といった反発があり、アニメ放送開始は2014年まで待たねばならなかった。

※6^ 大統領どうし、首相どうしなら、在任期間が長い人ほど中央寄りになるのが一般的。

【あわせて読みたい】

【画像出典(画像を一部加工しています)】
G7サミット(2018):Wikimedia Commons 内閣官房内閣広報室 CC BY 4.0
G20サミット:Wikimedia Commons Lauren Hurley / No 10 Downing Street OGL v3.0
フランス軍:Wikimedia Commons Marie-Lan Nguyen CC-BY 2.5
Google本社:Wikimedia Commons The Pancake of Heaven! CC BY-SA 4.0
マクロン大統領:Wikimedia Commons Prime Minister's Office GODL-India
高市首相とトランプ大統領:Wikimedia Commons Cabinet Secretariat CC BY-SA 4.0

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この記事を書いた人

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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