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今年のノーベル平和賞でも話題!「国際法」をちょっと知っておこう

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今年のノーベル平和賞でも話題!「国際法」をちょっと知っておこう

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連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜)

テレビやスマホに流れてくる、政治や経済のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?

この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します! ご意見・ご感想はXのハッシュタグ #ニュース解体中 でお寄せください。


2026年10月9日、今年のノーベル平和賞が、南アフリカ出身の法律家ナビ・ピレイ氏に贈られることが発表されました。授賞理由は「平和と国際法の促進に向けた努力」です。

でも「国際法」って、聞いたことはあっても、説明してと言われると困る言葉ではないでしょうか? 実はとても身近なこのルールは、いま「力がものを言う世界」の中で揺らいでいるといわれています。そもそも「国際法」とは何なのか、身近なところから順番にひもといていきます。

▲2026年のノーベル平和賞に選ばれたナビ・ピレイ氏(2023年撮影)
連載「ニュース解体中」のライター。大学院で公共政策を学ぶなど、政治・ニュースの話題を追うのが好き。
編集者。ニュースへの関心は人並みくらい。

そもそも「国際法」ってなに?

今年のノーベル平和賞、ニュースで見ました? 受賞したのはナビ・ピレイさんです。
国際刑事裁判所(ICC)の判事や、国連人権高等弁務官を務めた人で、授賞理由は「平和と国際法の促進に向けた努力」でした。
ニュースは見ました。ただ正直、「国際法」は聞いたことはあっても、説明してと言われると困ります……。日本の民法や刑法みたいに、「国際法」という名前の法律があるんですか?
実は、ないんです。
えっ、ないんですか? じゃあ、国際法って何なんでしょう?
そこを今日、身近なところから順番にひもといていきましょう。
読み終わるころには、「国際法ってこういうものか」とつかんでもらえるはずです。

実は毎日お世話になっている「国際法」

まず、カタヤマさんも今日すでに国際法のお世話になっているかもしれませんよ。
え、私がですか? 国際法が関係ありそうな話って、戦争とか、遠い国の事情ばかりかと思っていました。
たとえば、海外に手紙を送るとき。日本で切手を貼るだけで、相手の国の郵便局が届けてくれますよね。
言われてみれば、相手の国の郵便局にお金を払っているわけでもないのに、どうして届くんでしょう?
これは「万国郵便連合(UPU)」という国際機関と、その条約のおかげなんです。この条約こそ、まさに「国際法」なんですよ。
▲スイス・ベルンにある万国郵便連合の記念碑。UPUの本部もベルンにある
日本に国際電話をかけるときの「+81」も、「国際電気通信連合(ITU)」という国連の専門機関の取り決めにもとづいているんですよ。
もしかして、動画もですか? たとえばQuizKnockの動画が、海外で勝手に転載されたら……。
そうそう、動画も同じです。「ベルヌ条約」という著作権の条約があるので、外国でも作品が守られる仕組みになっているんです。
国際法って遠い話だと思っていたんですけど、生活のインフラみたいなものなんですね。
しかも、こういうルールには、ほとんどの国が加わっています。そのほうが自分たちにとっても得だからなんです。
入らないと、自分たちが損をしてしまうわけですね。
そうなんです。アメリカの国際法学者ルイス・ヘンキンは、こんな有名な言葉を残しています。
「ほとんどの国は、ほとんどの国際法の原則と、ほとんどの義務を、ほとんどいつも守っている」。
“ほとんど”が多いですね(笑)。でも「ほとんど」ということは、守られないこともある……?
そうなんです。実は、ニュースで国際法が出てくるのは、たいてい守られなかったときなんですよ。

国際法は強制力の弱い“おやくそく”?

手紙や電話のルールも国際法なんですね。でも「国際法」という名前の法律がないなら、そういうルールはどうやって決まっているんですか?
主に、国と国との約束である「条約」と、昔から「みんな当然そうするよね」と守られてきた「慣習国際法」でできています。

慣習国際法:文書の形で定められてはいないものの、多くの国が「守るべきルール」として繰り返し従ってきたことで、法として扱われるようになった決まり。のちに条約として文書にまとめられたものも多い。

私はよく、町内会の決まりにたとえるんですよ。回覧板が回ってきたら、読んで隣の家に回しますよね。
回しますね。回さなかったからといって、罰金を払うわけではないですけど。
そう。でも、ご近所から白い目で見られるかもしれない。国際法も、守る義務はあるけれど、守らせる仕組みは各国の協力にかなり頼っているんです。
守らないと信用を失う、と。……でもそれなら、破ったら必ず罰を受ける仕組みにすれば、もっと平和になりそうな気もします。
そう考えるのは自然だと思います。問題は、「誰が、どんな権限で罰を与えるのか」なんですよ。
国の上には、もっと偉い“世界政府”はありません。国連も、あくまで国が集まって話し合う場なんです。
国際的な裁判所もありますよね?
ありますね。国どうしの争いを扱う国際司法裁判所(ICJ)と、重大な罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)です。

国際司法裁判所(ICJ)/国際刑事裁判所(ICC):どちらもオランダ・ハーグにある国際的な裁判所。ICJは国連の主要な司法機関で、国どうしの争いを国際法にもとづいて裁く。ICCは国連とは別の条約にもとづく常設の裁判所で、集団殺害(ジェノサイド)や戦争犯罪などの重大な罪を犯した「個人」を裁く。

▲国際司法裁判所(ICJ)が置かれている、オランダ・ハーグの平和宮
裁判所があるなら、そこで裁いてもらえばいいのでは?
ただ、ICJで裁判ができるのは、関係する国がICJの裁判を受け入れると約束している場合に限られるんです。
ICCにも自前の警察はなく、たとえばある国の大統領に逮捕状を出しても、捕まえるのは加盟国まかせなんです。
裁判所はあっても、判決や逮捕状を実行するには、各国の協力が欠かせないんですね。それなら、いっそ世界政府をつくってしまえば……。
それが、そうもいかないんですよ。たとえば町内会が「どの家の庭にも、ラベンダー以外は植えてはいけません」と決めたら、どうでしょう?
うちはチューリップを植えたい、という家もありますよね。……あ、自分の家のことは自分で決めたい、ということですか?
まさに。国にとっての「自分の家のことを決める力」が主権です。主権の上にさらに主権をつくるのは、いまの世界では難しいんですね。
なるほど。そう考えると、“国際法”っていうより“国際おやくそく”くらいの感覚ですね。
そうそう、その感覚がぴったりだと思います。国連の安全保障理事会(安保理)の決定のように、従う義務があるものも一部ありますけどね。
でも“おやくそく”だと、破る国も出てきませんか?
実際、大きな国が国際法を破ったと批判される例はあります。
たとえば、どんな例が……?
2022年に始まった、ロシアによるウクライナへの全面侵攻。ICJは軍事行動の停止を命じましたが、ロシアは従いませんでした。
アメリカも、2003年のイラク戦争では、安保理の明確な承認がないまま攻撃に踏み切ったと批判されています。
大きな国ほど、守らなくても困らない、ということですか?
いや、困ることは困るんです。ロシアには多くの国が経済制裁をかけていて、一部の銀行は国際的な送金の通信網「SWIFT(スイフト)」からも締め出されました。
で、ここが大事なところで。国際法を破ったと批判される国も、だいたい「国際法を破ります」とは言わないんです。
……むしろ「守っています」と言う、ということですか?
そうなんです。ロシアは侵攻のとき、ウクライナ東部の住民を守るためだとして、国連憲章が認める「自衛権」を持ち出しました。
アメリカも、イラク戦争では、それまでの安保理の決議が根拠になると主張しています。
本当に守っているかどうかは別として、「国際法の上ではセーフです」と説明するんですね。
これを、ただの建前と見るか、ルールの力と見るか。私は、言い訳をしなければならないこと自体が、国際法が効いている証拠だという見方もできると思っているんです。
ということは、もし力の強い国が、言い訳すらしなくなったら……?
実はいま、まさにそれが心配されているんです。

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Alex

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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