コジマです。
多くの人が取得する自動車の普通免許。取得の過程で○×形式のペーパーテストを受けるが、しばしば「それ論理的にどうなの?」と言いたくなるような問題が出る。
論理的に? 論理といえばベン図、微妙な免許試験をベン図化すれば、どこがおかしいのか分かりやすくなるかもしれない。やってみよう。
問1:夜の道は危険なので、気をつけて運転しなければならない
この問題は×で、「昼夜問わず、常に気をつけなければならない」かららしい。うーん……。
ベン図にするとこうなる。運転する、という行為を時間帯でグループ分けして要素とし、その集合を全体集合とする。なお、全体集合はアルファベットのUで表すのが一般的だ。
各要素(図では「朝の道」「昼の道」「夜の道」)に対して、「気をつけて運転しなければならない」が正しい(真)か誤り(偽)かが決められる。一般的に運転は気をつけなければならないものだから、今回はすべての要素が真となる。図では、真の要素だけ集めた部分集合を実線で囲んで表してある。
問題は問いの聞き方である。「夜の道は気をつけて運転しなければならない」と聞かれたら、夜の道という「1つの要素」に対しての真偽で判定せよ、と解釈されるはずで、論理的にも間違っていない。
ところが正解を見るに、「『気をつけて運転しなければならない』が真である時間帯の集合が『夜の道』ただ1つから成っているかどうか」を問うているようだ。聞き方が悪い!
強いてこれを聞くとすれば、
危険な夜の道は気をつけて運転しなければならないが、朝や昼は安全なので気をつけなくてもよい
となる。んなわけあるかい。
問2:標識のない一般道路では、時速100kmで走行してはならない
この問題も「時速60km以上で走行してはならない」から×。
図にすると、実は1問目と同じ問題があると分かる。問題文からは明らかに「時速100kmでの走行」のみの真偽を問うているはずなのに、出題者が聞きたかったのは走行してはいけない運転速度の集合を正しく理解しているかどうか。
それならば
標識のない一般道路における制限速度は、時速100kmである
と聞けば良い。制限速度に正解は1つしかないので、これで文句を言う人はいるまい。
問3:交差点の3m以内は停車してはいけない
A.「交差点では5m以内は停車してはいけない」から×。
これは今までの2問と似ているようで少し違う。上の2つは「ある要素」の真偽だったが、この問題では「3m以内」と集合を問う形になっているのだ。
とはいえ、「5m以内」は「停車してはいけない」のだから、3m以内は当然停車してはいけない。集合の言葉でいえば、「3m以内」の集合のすべての要素は「5m以内」の集合に含まれる、つまり「3m以内」の集合は「5m以内」の集合の真部分集合である。
こんなややこしい議論を生んでしまう問題は、素直に
交差点で停車してはいけないのは、交差点から3m以内の範囲である
としてしまおう。
問4:歩行者が近くにいるなら徐行する
これはなんと「ある程度離れていれば徐行しなくても良い」から×なのだという。
あえて図示するとこうなるが、明らかにおかしいのが見て取れるかと思う。
交通ルールとして、歩行者が近いときは徐行する、遠いときはしない、という線引きがあるとする。問題では「近くにいる」と言及してしまっているので、論理的には真の集合に入れざるを得ない。
これを「ある程度離れているときはそうではないので×」とされてしまうなら、この問題は絶対に答えが出ないと言わざるを得ない。
もしこの問題が今も出されているのであれば、どうか削除していただきたい……。
クイズを作るときは、
- 例外が出ないか
- 例外が絶対に出ないような聞き方はないか
を考えて作る必要がある。
ベン図を書く必要まではないが、答える側に配慮した問題文を作る意識というのは持ち続けたいものだ。