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日本甜菜製糖株式会社

サムネイル画像(歌舞伎)出典:Wikimedia Commons Amaury Laporte CC BY 2.0
※画像はイメージです。


こんにちは。学芸員を夢見て勉強中の田又です。

みなさん、映画『国宝』は観ましたか?

今年(2025年)6月に公開されると大ヒットを記録し、11月には実写の邦画として歴代興行収入1位に躍り出ました。「国宝(観た)」が「2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」のトップ10に入り、さまざまな映画賞も受賞するなど、2025年はまさに国宝イヤーでした。

ただ、映画で取り上げられていた歌舞伎などの伝統芸能はいわゆる「人間国宝」のくくり。……つまり、「人間国宝は国宝ではない」ということ。一体何が違うのでしょうか?

「国宝」は「モノ」の文化財

現在、国の文化財は「文化財保護法」という法律で定義されていて、「国宝」の位置づけは以下の通りです。

▲「国宝」はここ

つまり、「国宝」は「有形文化財」の中でも特に価値の高いものしか指定されないということです。

ちなみに、2025年は「国宝展ブーム」の年でもありました。京都国立博物館や大阪市立美術館などで国宝を多数展示する特別展が開催され、展示品はどれもなかなかお目にかかれない貴重な文化財でした。

▲国宝「埴輪 挂甲の武人」
(東京国立博物館所蔵 国立文化財機構所蔵品統合検索システムを加工して作成)

「人間国宝」は「わざ」の文化財

同じように「人間国宝」の立ち位置を示すと以下のとおり。正式名称は「重要無形文化財の保持者」といいます。

▲「人間国宝」はここ

歌舞伎を例に取れば、「歌舞伎立役(成人男性の役)」の重要無形文化財を体得している「七代目尾上菊五郎(このほか数名が認定されています)」が保持者の1人(=人間国宝)となるという仕組みです。

そもそも「人間国宝」が通称であることや、「無形文化財」に属することなどが「国宝」との違いです。

人数制限がある!?「人間国宝」を詳しく知る

「人間国宝」の大きな特徴として、さまざまな制限があることも見逃せません。

一度認定されると、基本的に存命中は毎年200万円の特別助成金を受け取ることができますが、予算の関係から定員が116名に制限されています。

さらに、現在のところ歌舞伎や音楽などの「芸能」分野と陶芸や漆芸などの「工芸技術」分野の体現者しか認定できないという制限も存在しています。例えば、「和食の料理人」のような人は「人間国宝」になることができないわけです。

このような状況を受けて、新たに「生活文化」の新分野を加えようという動きが進んでいます。今年(2025年)10月には具体的な指定基準が定められました。早ければ来年度から料理人や書道家のような「わざ」の体現者を認定することが可能になり、定員の増加も行われる見込みです。

文化財のおもしろさ

よく似た言葉の「国宝」と「人間国宝」ですが、制度を細かく見ていくと違いがありましたね。

少し話は戻りますが、私が「国宝展」で見たなかで特に印象に残ったのは狩野永徳の『唐獅子図屏風』でした。歴史の教科書にもよく掲載されている、「国宝の中の国宝」と呼べるような作品ですね!

▲狩野永徳『唐獅子図屏風』
(皇居三の丸尚蔵館所蔵 出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム

資料の保存と活用を両立するために、国宝・重要文化財の公開は原則1年に60日以内と定められています。1つ1つの国宝に対して数年単位でのスケジュール管理が行われることも珍しくなく、「国宝展」のような機会を設けるのは容易ではありません。今年多くの国宝をこの目で見られたのは、とてもいい機会だったと思います。

対して、「人間国宝のわざ」を感じられる場所は意外と生活の身近にあるかもしれません。歌舞伎座や美術館、博物館、ときには映画館などなど。

私が「人間国宝」を知ったきっかけは、地元にあった刀匠の美術館でした。当時は完成品の日本刀にばかり注目していましたが、実際は重要な作刀技術、つまり「わざ」を中心とした展示であったというわけです。

映画や展示会、もちろんこの記事のようなきっかけから、文化財を見ること・伝えることのおもしろさに気づいていただけたらとても嬉しいです。

最後にクイズで「人間国宝」の復習をしましょう!

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この記事を書いた人

田又春哉

京都府立大学3年の田又春哉(たまた・はるや)です。群馬県太田市出身。歴史地理学を学んでいます。京都府立大学クイズ研究会「桂葉会」で会長としてクイズを楽しんでいます。好きなものは群馬県と旅行。

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