なぜ『オトナブルー』なのに「赤」ばかり登場するのか?
『オトナブルー』に登場する「レッド」の謎。もはや妄想に妄想を重ねた推測にしかならないのだが、ここまできたら最後まで解き明かしたい。
クイズも謎も、ヒントはいつも「例外」にある。サビ終わりに出てくるこの曲唯一の「青いもの」、「青い蕾」が鍵だ。
見た目よりも残るあどけない
心だけが 先走る
青い蕾のまま大人振る新しい学校のリーダーズ『オトナブルー』
(作詞:新しい学校のリーダー達)
おそらくアマリリスの蕾、ということなのだろうが、2Pカラーのアマリリスを指しているわけではない。慣用表現としての「青」である。「青二才」「尻が青い」の「青」、未熟を意味するものだと言えよう。「オトナ」がテーマなのだからこれが自然だ。
となると、様々に配された赤はその反対。「成熟」を意味するものだろう。「花になるアマリリス」「くちびる」はどちらも、オトナのイメージとして登場している。「ブルー」な自分にとっての憧れが「赤」なのだ。
赤の存在が、青をいっそう強調する。冒頭にも述べたように、西洋において「ブルー」は純潔のモチーフ。同時に、「ブルーな気持ち」、すなわち不安にも通じるだろう。汚れなき青春(これも「青」だ)とその不安を「大人ぶる」と掛けている……のかもしれない。
赤を追っていたら、青の深さにたどり着いた。つくづく、見事なタイトルである。
「ブルー」な曲、青くないがち
青いモチーフを使わずとも、いやむしろ使わないことで憧れと不安を表現した『オトナブルー』。
とはいえ、この特徴はなにもオリジナルなものではない。かつての「ブルー」な名曲たちも、「Something Blue」を含まないものが多いのだ。
BOØWYの代表曲『B・BLUE』は「明るい空の青」を意味する「Baby Blue」がタイトルに冠されているが、「空」すら登場しない。フィッシュマンズの『BABY BLUE』も、サニーデイ・サービスの『baby blue』もだ。
桑田佳祐『Blue〜こんな夜には踊れない』も、ポンティアック(外車)が青いボディである可能性を除けば不在。LUNA SEA『TRUE BLUE』は、「作りかけのパズル」がルービックキューブだとしても5/6はFALSEである。
▲「ブルー」には無限の可能性がある
「青い」とタイトルにある場合は具体的なもの(山脈であったり、ベンチであったり)を指す場合も多いが、「Blue」はもっぱら心象メイン。そういう意味でも、『オトナブルー』はヒットソングの王道を歩んでいたのである。
「オトナ」とはどんな色なのか?
三十路前、ブルーは遠くなりにけり。この曲を外側から眺める歳に、自分もなってしまった。
とはいえ、大人には大人の純粋さがある。大人なりに、何かに夢中になり、酔うことはできるのだ。今の自分が歌うなら、歌詞はきっとこうなるだろう。
題するなら『オトナゴールド』。仕事終わり、ヤワな男に戻る瞬間も悪くはないものだ。
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