やっぱり他の人が書いた筆跡はバレるものなんでしょうか?
基本的には、バレます。
おぉ〜!
我々がおこなっている筆跡鑑定では、意識しづらい、つまりマネするのが難しい部分を重視して判定していますから。
また、たとえ文字の形が似ていても、マネするときに書くスピードが遅くなって線が震えたり文字が揺れたりするので、そういった部分でも識別できます。
逆に、識別が難しい場合はありますか?
怪文書の識別は難しいですね。
怪文書!?
ときどき怪文書の送り主を調べたいという依頼があるんです。ただ、定規などを使って書かれた怪文書だと、筆跡の特徴が全くわからないので、鑑定のしようがないんです。
他にも、高齢の方が書かれた文字を、若い頃の文字と比較して鑑定するのは難しいケースもあります。子どもの筆跡も、まだ安定していない場合が多いため、鑑定が難しいですね。
なるほど! 鑑定を依頼する側は、そういった事情も踏まえたうえで資料を集める必要があるんですね。
筆跡鑑定って、いつ使うの?
先ほど怪文書の依頼の話がありましたが、実際にはどんな依頼が多いのでしょうか?
ダントツで多いのは遺言書関係ですね。遺産相続に関わるものなどで、全体の依頼数の7割を占めます。
遺言書が7割!? 予想以上に多くて驚きました。
依頼のなかで、特に筆跡鑑定が重要になるケースにはどのようなものがありますか?
遺言書が複数ある場合や偽造が疑われる場合ですね。実際に、3人きょうだいのお母様が亡くなった際に、3人全員が違う内容の遺言書を持っていたというケースがありました。
すごい……ドラマみたいですね……。
詳しくはお話できませんが、遺言書のご依頼にはやはりいろいろなケースがあります。それくらい家族にとって大切な問題ですから。
なるほど。
ひとつ言えることは、きょうだいは仲良くした方がいい、ということですね。
言葉に重みがありますね。
あと遺言書の次に多いのが企業内の不正調査で、例えば領収書が偽造されているかどうか確かめてほしい、といった依頼をいただくことがあります。その次が怪文書ですね。
いろんなところに筆跡鑑定の需要があるんですね。
アニメなどでよく見る筆跡鑑定の使われ方、実際もあるの?
フィクションのなかでは筆跡鑑定は事件で登場することも多いですよね。例えば、『名探偵コナン』で、筆跡鑑定を行うために複数の容疑者に同じ文字を書かせるというシーンがあったのですが、こういった使われ方は実際にあるのでしょうか?
▲名前と「ゴメンな」の文字を……
一応あります。が、「筆跡鑑定をします」と事前に伝えた上で文字を書いてもらうのは、字が緊張で震えたり、わざといつもと違う書き方をされたりして、正確な鑑定結果が出にくいので、あまり良くないです。
やはり実際とは違うところもあるんですね。
ただ、プロの視点から見ても、コナンのようなアニメはいろいろと調べて作られているなぁと思いますね。
さすが国民的アニメですね。
どうやったら筆跡鑑定人になれるの?
ちなみに今回の取材で筆跡鑑定にさらに興味を持ったのですが、鑑定人になるには何か資格などは必要なのでしょうか?
資格は必要ありません。実際に筆跡鑑定ができる仕事に就きたい場合は、警察の科捜研(科学捜査研究所)に入って、法文書関係の部署で働くことをおすすめします。
一人前の鑑定人になるまでにはどれくらいかかるんでしょうか?
大体3〜4年はかかると思います。筆跡鑑定においては数値解析の理解と経験が重要になってくるので、とにかくたくさんの解析データと資料を見ることが大切です。
習うより慣れろ、ということですね!
最後に、読者に向けて一言、アドバイスをお願いします。
きょうだいとは仲良くしておきましょう!
ありがとうございました!
マネして書いたらバレない説、立証ならず
「マネして書いたらバレない説」立証ならずでしたが、あえてマネしにくいところを比較して識別するなど、筆跡鑑定の世界の奥深さを知ることができました。これからアニメやドラマを見る際の楽しみがまたひとつ増えた気がします。
そして筆跡鑑定についてだけではなく、「きょうだいは仲良く」という人生の教訓も学びました。肝に銘じます!
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