こんにちは、服部です。
最近、「エレベーターで異世界に行く方法」なる都市伝説を知りました。読んでから「絶対どこかのYouTuberが実践してそうだ」と思いながら検索すると、案の定動画が……。(気になる人はご自分でどうぞ)
そもそもエレベーターというのは「狭くて薄暗い密閉空間」というイメージがあり、不気味なところがありますね。
その不気味さに輪をかけていると思われるのが、「電波状況が悪い」こと。エレベーターの中で携帯やスマホを開いたら圏外だったという経験が、みなさんにも一度はあると思います。
エレベーターで通信状況が悪くなるのは一体なぜでしょうか。
電磁遮蔽説
ひとまず、書籍やインターネットで様々な説を調べてみました。最初にぶち当たったもっともらしい説明は、電磁遮蔽(でんじしゃへい)が起こっている、というもの。
電磁遮蔽とは、ごくごく単純に描けば上図のように、「金属などの導体(電気を通しやすい物体)に囲まれた内部の空間は、外の電磁波の影響を受けない」という現象です。調べてみると確かに、エレベーターのかごは鉄で囲まれているようです。
しかし、「電磁遮蔽が起こるためには、金属に少しでも隙間があってはダメだ」と言っている記事も出てきました。エレベーターかごが完全に金属に囲まれているかどうかは、機種やメーカーによっても違いがあるでしょうし、完全に当てはまるかは微妙そうです。
コンクリートのせい説
次に浮上したのが、エレベーターの昇降路(通り道)を囲む鉄筋コンクリートによって電波が遮られるという説。よく「高いビルのそばでは電波が届きにくい」といわれるように、コンクリートは電波を著しく減衰させます。
経験則として、ガラス窓がつけられたエレベーターの多くは、通信に問題はありません。裏を返せば、ガラス窓のないエレベーターにおいては、上記の電磁遮蔽、もしくはコンクリートによる減衰のいずれかが起こっている可能性があります。
尋ねてみた
結局、どちらが本当に正しいのか、聞いてみました。
まず伺ったのは、日本エレベーター協会さん。
――エレベーターかごは金属で完全に覆われているのでしょうか。
協会:エレベーターのかごは、(建築基準法施行令によって)かご内の衝撃に対して安全なもので、難燃材料で造り、又は覆うこととなっています。かごを鉄などの金属製で造るとは規定されていませんが、一般的に強度、難燃材料として鉄板が用いられることが多いです。
――エレベーターかごで電磁遮蔽は起こるでしょうか。
協会:測定等していませんので、どの程度影響が出るのか分かりません。エレベーターかごは完全密封状態ではありませんので、ある程度の電波の放射はあると思いますが外部に比べて弱いあるは途切れることがあると思います。
こちらで懸念したとおり、「エレベーターかごは完全密封状態ではない」とのご回答。昇降路についても、難燃性材料で覆うことは決められていますが、どのくらい覆うかはものによるそう。
とはいえ、ほとんどの部分が覆われていれば、やはり電磁遮蔽らしきものが起こりやすくはなるようです。
さらに調査を進めると、日立ビルシステムさんから興味深いお話が。
日立:エレベーターの昇降路は稼働音を抑制するために、コンクリート壁が厚めにとられていることがあるので、それが影響しているのかもしれません。」
エレベーターを動かすと、モーターなりコンベアなりの音が響きますね。検索してみると、エレベーターの騒音に関するサイトがたくさん出てきます。
つまり、「騒音がうるさいという声があるので、昇降路の壁を厚くして対策したところ、電波が届きにくくなった」という流れが推測できます。
エレベーターの騒音は、側の部屋を使う人からしたら死活問題です。オフィスビルなどでも、「会議中にしょっちゅうガタゴトと音がする」というのはなんとも言えないですね。
多少電波が悪くなっても、騒音対策が優先されたままなのは仕方がないのかもしれません。
おわりに
エレベーター内の通信状況の悪さは、「電磁遮蔽説」「コンクリート説」でおおよそは説明できるらしいことがわかりました。
不便ではありますが、エレベーター内で携帯電話が使えなくても支障がないように、設備を整えることが決められているそうです。
協会:エレベーター内には、外部通信手段としてインターホン等の設置が建築基準法施行令第129条の10(エレベーターの安全装置)で義務付けられています。閉じ込め等何らかの異常に出会った場合は、この装置で外部に異常を知らせることが出来るようになっています。
便利なエレベーターが増えればありがたいですが、それが実現するまでは、「圏外のときは少し目を休める」など、不要不急のスマホいじりを見直す機会にしてみてはいかがでしょうか。
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この記事はQuizKnockライター・Kosuke Hattoriが「ねとらぼアンサー」で書いたものをリライトしたものです。