漢字より先に五線譜の読み方を覚えました、はぶきです。
みなさんは、今までの人生で『ドレミの歌』を一度は習ったことがあるかと思います。「ドはドーナツのド」から始まる、あの歌です。
しかし、「ド」の由来がドーナツの「ド」なのかと言われればそうではありません。そもそも、原曲である英語版ではドーナツではなく「a deer(鹿)」と歌われています。
では、本当は一体何の「ド」なのでしょう。
「ドレミファソラシド」って何語?
音の名前(以降「階名」と呼びます)として最もメジャーな「ドレミファソラシド」、実はイタリア語です。
階名はこの他に、英語では「CDEFGABC」、ドイツ語では「CDEFGAHC」、日本語では「ハニホヘトイロハ」と表現します。「ハニホヘトイロハ」は馴染みがないかもしれませんが、「ハ長調」などというときの「ハ」は、この日本語の階名から来ています。
「ドレミファソラシド」って誰が決めた?
「ドレミファソラシド」が誕生したのは今から約1000年前、まだ音の長さを記譜する方法が確立していなかった時代です。『聖ヨハネの賛歌』という曲の一節に、こんなメロディーがあります。
この曲の赤くマーカーを引いた部分の発音と、音の高さに注目してみてください。
「Ut」「Re」「Mi」「Fa」「Sol」「La」が、それぞれ「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」の音で書かれていることがわかります。
この曲から、グイード・ダレッツォという修道士であり音楽教師であった人物が、同僚への手紙でこのことを紹介し、後の階名の基礎を築きました。
「ド」と「シ」はどこから来た?
お気付きの方もいるかもしれませんが、この曲では「ド」は「Ut」と表記されていますし、「シ」に至っては曲中に存在しません。
実は、当初は詩の通り「Ut」と呼ばれていましたが、その後「主」を表す言葉である「Dominus」の頭文字を取って「Do」と発音されるようになりました。
残る「シ」は、ド〜ラとは違ってその後数百年間考案されることがなく、しばらくの間はド〜ラの6音による「ヘクサコルド」という音列によって音楽は表現されていました。しかし、やがて詩の最後「sancte Iohannes(聖ヨハネ)」を略した「Si(シ)」が誕生し、階名は現在の姿になったのです。
おわりに
「本当は何のドなのか?」という問いの答えは、「Dominusのド」でした。
これからは、友達が「ドはドーナツのド」と歌ったら「Dominusのドだよ」と優しく教えてあげましょう。教えた後も友達でいられるかどうかはわかりませんが……。