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こんにちは、ライターのRavenです。

先日ニュースサイトを見ていたら、今月(2023年9月)開催されたG20サミットに関する記事を見かけました。G20サミットは世界の20の国と地域の首脳による国際会議で、今年はインドの首都ニューデリーで開かれたとのことです。

が、しかし。この記事を読んでいた私は、ふと違和感を覚えました。

あれ? インドの首都、デリーって習ったぞ?

一応中学時代に使っていた地図帳を引っ張り出してみたのですが、やはり首都はデリーとのこと。インドさん……首都はデリーなのかい! ニューデリーなのかい! どっちなんだい!

結論:どっちでもいい

結論から言うと、「どっちでもいい」です。

その最大の理由は、「ニューデリー」は政府の機関が集まる地域のこと、「デリー」はそのニューデリーを含んだ一帯の地域だからです。

インドは首都が何度も変わっている

デリーは古くからインド諸王朝の首都として機能していました。しかし、後にイギリスによる植民地化を受け、1877年にインド帝国が成立すると、首都機能はイギリスのインド進出の拠点であったコルカタに移ります。

1911年、イギリス国王ジョージ5世はコルカタからの遷都を宣言し、デリーの南方に新首都を建設します。これが現在のニューデリーであり、デリーは「オールドデリー」と呼ばれるようになりました。独立後も首都はニューデリーに置かれ、1956年には周辺が「デリー連邦直轄領」として政府に直接統治されるようになりました。現在はこのニューデリー、オールドデリー、そしてデリー軍事区の3つを合わせてデリーと総称しているのです。

▲デリーの地図(d-maps.comを元に作成)

ニューデリーには、政府の機関が集まっています。つまり、デリーとニューデリーの関係は、日本に置き換えると「東京と永田町」の関係に近いと言えるでしょう。「日本の首都はどこ?」と訊かれて「永田町!」と答えるのには、少し違和感がありますね。

インドでも統一されていない

ではインド側の主張はどうなのでしょうか?

インド政府はニューデリーをインドの首都と定めており、日本の外務省のホームページにも、首都はニューデリーと書かれています。しかし、インド憲法やデリー首都圏地域法という法律では、「首都はデリー」という表記が用いられています。外務省のホームページにも「インド連邦直轄領の一つである『デリー』の呼称も広く一般的に使われています」との注釈が入っています。どっちやねん

話は少しそれますが、日本の首都を東京と定めている法律はありません。首都圏整備法では「首都圏」を「東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域」と定めており、「首都圏が東京周辺なら首都は東京だろう」と解釈できなくもないのですが、日本の首都に関する明確な法律上の根拠はないのです。あれ? インドに対して「どっちやねん」なんて言ってしまいましたが、案外わが国も似たようなものなのでは……?

学校ではどっちで習った?

では日本の学校ではどのように教えているのでしょうか?

かつて日本の教科書では、文部科学省による「義務教育諸学校図書検定基準」の取り決めによって、外務省管轄の財団法人・世界の動き社から出版されていた『世界の国一覧表』に基づいて国名を表記していました。この『世界の国一覧表』での表記がニューデリーからデリーに変更されたことで、2002年頃から教科書や地図帳での表記もデリーに改められ、現在でもそれが引き継がれているのです。

現在は世界の動き社が解散したことで、『世界の国一覧表』は発行されておらず、検定基準でも国名について「原則として外務省公表資料等信頼性の高い資料によること」と変更が加えられました。あれ? でも外務省は首都をニューデリーとしていますよね?

実は義務教育諸学校図書検定基準では、地名については以前から「慣用を尊重すること」と定められていました。そう、国名はともかく、地名まで『世界の国一覧表』に従う必要はなかったのです。デリー派とニューデリー派とに分かれてしまう原因は、『世界の国一覧表』を基準にしていたところにも、原因があるのかもしれませんね。

▲まとめるとこんな感じ

あなたはどっち派?

結局「デリーでもニューデリーでも構わない」という結論に落ち着いてしまいました。なんだか煮え切らない気分ですが、私個人はやはり「日本の首都は永田町」のような言説に納得がいかないので、デリー派に付こうと思います。あなたはどうする?


ちなみに、インドの人々は自分たちの国のことを「バーラト」と呼んでおり、今回のG20サミットでは「インド首相」という肩書が「バーラト首相」という表記に変更され、外交の場で用いられるのは初めてではないかと話題になりました。皆さんも身の周りの「諸説あるもの」に注目してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

Raven

京都大学法学部卒。「ONE WORD, NEW DOOR」を座右の銘に、皆様が新たな世界への扉を開けるような記事を書くべく努力してきました。よければ覗いてみてください。

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