イランカラㇷ゚テ! のせぴりか セコㇿ クレヘ アン。
(こんにちは! 私の名前はのせぴりかといいます。)
タント ポロンノ イタカンロー!
(今日はたくさん話しましょう!)
いきなりですが、アイヌ語で挨拶してみました。映画やドラマでも盛り上がりを見せている大人気漫画『ゴールデンカムイ』。アイヌの少女であるアシㇼパさんを中心に、アイヌの暮らしを色濃く反映した作品としても注目を集めています。今日は、そんなアイヌ文化の魅力を、私のせぴりかが考えます。
アイヌ語ってどんな言葉?
文字を持たない!
アイヌ語は、北海道を中心に生活してきたアイヌが話す独自の言語で、もともとは言語を記す文字がなく口伝えで受け継がれてきました。しかし江戸時代のころから言語の記録のために文字で記した書物がみられるようになり、大正時代になると、アイヌの人々もアイヌ語を紙に書き残すようになったといいます。
現在では下のように、カタカナとアルファベットの2種類の表記方法が用いられています。カタカナ表記は音を表すのに向いているほか、アイヌ語にない「スマホ」「電車」といった単語を輸入しやすいメリットがあります。一方で、アルファベット表記は文法を表すのに向いていて、辞書で単語を調べる際にも重宝します。冒頭の私の自己紹介を振り返ってみましょう!

アイヌ語表記に登場する特殊な文字
「イランカラㇷ゚テ」「アシㇼパ」のように、アイヌ語をカタカナで表すときには、小さいカタカナが登場します。日本語にない発音を表すために、このように表記されます。
また、アルファベット表記に出てくるイコールは、動詞や名詞の主格人称(「私の」、「あなたの」など)や目的格人称(「私に」、「あなたに」など)を表すための記号です。
私たちの身の回りにあるアイヌ語
「札幌」「稚内」「知床」など、北海道の地名の多くがアイヌ語に由来していることは有名ですよね。でもそれだけではなく、私たちの生活に欠かせないアイヌ語があるんです。それが、動物の名前。たとえば、ラッコ、シシャモ、トナカイ……これらの動物の日本語名は、すべてアイヌ語に由来すると考えられています。
でも少し不思議ですね。ラッコやシシャモはまだしも、トナカイが北海道に生息しているという話はあまり聞いたことがありません。
実は、アイヌは北海道だけでなく、もっと北の土地である樺太や千島でも生活を送っており、そこでトナカイの毛皮や角を用いた交易が行われていました。トナカイは、実はアイヌの人々にとって欠かせない動物だったのです。

さて、私たちがいまこうしてアイヌ語に触れることができるのは、ひとえに文字を持たなかったアイヌ語の表記方法を発明し、調査・保存に尽力してきた先人たちのおかげです。アイヌ語は多くの研究者が調査・研究に取り組んだ言語で、録音資料や文字に書き起こした記録が豊富に残されており、これは世界の危機言語を見渡しても稀なことなんだそう。
アイヌ語研究の突破口、意外な調査術とは?
そんなアイヌ語には、研究にまつわる面白いエピソードがあります。
明治時代、金田一京助という言語学者がアイヌ語の調査に乗り出しました。当時は日本言語学の黎明期にあたり、日本語を研究するにあたって周辺で話されている様々な言語の研究も必要とされていたのです。
研究を進めるにあたって、まずは「なに?」という意味のアイヌ語を知る必要がありました。ところが、京助は現地のアイヌの人々が何を話しているのか全くわからず、逆に何を話しかけても言葉が通じません。
どうにかして、「なに?」を意味するアイヌ語を聞き出したい。そこで、彼は「ある方法」をひらめき、このピンチを乗り越えました。みなさんはわかりますか?
▲金田一京助(中央)