みなさん、こんにちは。ライターの刈谷です。この前、家に帰ったらめっちゃ大きな……

なんだこいつ~~!!!
首より上がないし、その代わり(?)に顔がお腹にあるし、なんか物騒な武器持ってるし、それになぜか楽しそうに踊っている…… 怖い。でもどこか間の抜けた顔が愛らしくもある。
なんか「いらすとや」さんに載っていそうな見た目をしているので調べてみると、案の定載っていました。説明文いわく「斧と盾を持った頭のない中国の神様、形天(けいてん)のイラストです。」だそうです。
こいつこんな見た目して神様なんだ。気になったので調べてみると、「形天」をはじめとしたさまざまな魑魅魍魎が紹介されている書物があるみたいです。今回はそんな書物『山海経』を紹介します。
『山海経』って何?
『山海経』は古代中国の神話や地理をまとめた書物です。中国大陸について記述した「山経」(南山経・西山経・北山経・東山経・中山経)と、海の彼方に存在する世界(つまり異国)について記述した「海経」(海外経・海内経・大荒経)に大きく分けられます。
それぞれの地域の地理・山脈・河川・産物・習俗などを記載しており、古代中国の世界観や自然観を知る上で重要な資料となっています。現在のところ成立年も作者も未詳で謎が多いのですが、おそらく紀元前には成立しているとされ、少しずつ形を変えながら伝わっているのです。

なかでもおもしろいのが「怪物」や「神」に関する記述で、とにかくたくさん紹介されています。それぞれの「怪物」や「神」がどのようなところに住み、どのような影響を人々に及ぼしているか、という記述が大変多いです。今回は『山海経』の「怪物」や「神」たちにスポットを当てていこうと思います。
『山海経』はさまざまな版本がありますが、本記事は基本的に清の郝懿行による『山海経箋疏』の翻訳をもとにしています。
まずはアイドルたちを紹介
初めに紹介するのは先ほど出会った「形天」。

『山海経』によると、かつて形天は帝と争う中で、首を切られてしまったそう。首は葬られ、その代わり乳が目、へそが口になってしまい、斧と盾をもって踊り続けているんです。こんなにコミカルで素敵な姿をしているのに、悲しい過去があったのですね。どうして顔の機能がお腹に移され、踊り続けているんでしょうか……詳しい部分は謎です。
他には「帝江」も有名です。かわいい。「形天」と同じく、「帝江」もいらすとやにあります(だからなんで?)


姿は黄色い袋のよう。6つの足と4つの翼、目も顔もない。なんと歌と舞について知っているらしい。この見た目で芸術に通じているとは、さすが神といったところ。この神は古代中国の思想書『荘子』に登場する「渾沌」のもとになったとされており、『荘子』には「渾沌」に関するこんな話が。「人には皆七つの穴があるが、渾沌にはない。そこで毎日ひとつずつ穴を開けていくと、七日目で死んでしまったという」。急に穴を開けられていてなんだかかわいそうですが、かわいげのあるエピソードですね。
怪物が現れると何が起こる?
怪物が現れることは、何かの予兆だと考えられていました。『山海経』には怪物が引き起こす出来事が詳しく記されています。
水害を起こす「蛮蛮」「化蛇」、干ばつを起こす「䖺䗤」「獙獙」、戦争を起こす「朱厭」「鳧徯」、重労働を発生させる「貍力」「猾褢」などがいます。
水害や干ばつといった自然災害だけでなく、戦争や重労働といった人為的な災害を引き起こす怪物がいるのがおもしろいですね。

災いを引き起こす怪物ばかりではありません。逆に、人々に幸福をもたらす怪物もいます。例えば天下に実りをもたらす「当康」や平和をもたらす「鳳皇」などがいます。
当時の人々は外の世界からやって来る災いや恵みを、怪物に見立てていたのかもしれませんね。
変な国
『山海経』には海の彼方に存在する不思議な国についてもたくさん紹介されています。特にその国の住民の体が不思議な形状をしているのです。
まず紹介するのはこちら。「貫匈国」の住民です。

この国の人々は胸に穴が開いているのだそう。こんな感じで棒を通して運ばれているんですかね。相当の穴の硬さがないとかなり痛そう。
次は「交脛国」の住民です。

この国は先ほど登場した貫匈国の東に位置しています。かなりホットなエリアですね。住民は上のように足が交差しているらしいです。貫匈国に比べると「ただ足が交差しているだけ」なので、ややインパクトに欠けますが、このような特徴を持った人々がいる国もたくさんあります。
こちらは「聶耳国」の住民。

この国の住民は「聶耳」の字面のとおり、とにかくこの長く大きな耳が特徴的で、常にこの耳を手に抱えているそう。さらに、海中に集まって暮らし、2頭の虎を馴らして使っているといいます。なかなか癖が強いですね。
想像してみるとこんな感じでしょうか?

その他怖い怪物を紹介
『山海経』にはまだまだおもしろい怪物がいます。その中のいくつかを紹介します。
こちらは「相柳」。

人の顔と蛇の体をもっているのですが、なんとその顔が9つあり、9つの山のものを食べているそうです。細い体に9つの頭ってかなり重そうですが、支え切れるんでしょうか?
こちらは「何羅魚」。

1つの首に10個の体がついています。犬が吠えるような声をしているそう。頭よりも体の方が多いという発想はありませんでしたね。かなり泳ぎづらそう。それぞれの体で意思疎通がとれるものなのでしょうか。でも頭は1個だからとれるのか……?
最後は「夔」です。

流波山という山の頂上に住んでいる、角がなく、青い体で、一本足の、牛のような怪物です。要素がかなり多いですね。漢字の画数の多さと「キ」1文字という読みからも、ただ者じゃない感じが伝わってきます。
こちらの「夔」ですが、なんと山梨県の山梨岡神社に「夔神」として祀られており、神社には木彫りの像が設置されているのです。中国で生まれたモチーフが、海を越えて遠く離れた日本にやってきて、神として信仰されているとは驚きですね。
▲山梨岡神社に祀られている夔神の掛軸が見られます
クイズで復習!
おわりに
『山海経』の世界、なかなか強烈だったんじゃないでしょうか? まだまだおもしろい怪物はたくさんいます。 ぜひ調べて彼らに会いに行ってみてください!

お前、まだいたのかっ……!
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