早速ですが問題!この絵画の中央にいる人物は誰でしょう?
チッチッチッチッチッチ
チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチ
正解は聖母マリアです! (この作品はムリーリョの『無原罪の御宿り』)
正解した人はスゴイ! では、この女性が聖母マリアである証拠がどこにあるかまでわかりますか? 正解できなかった人も大丈夫! この記事を読むと「何を観ればいいのか」が分かるようになります!
それでは解説にまいりましょう~!
「絵画を解くカギ」は持ち物にあり!
▲左カルロ・ドルチ『悲しみの聖母』 1655年頃 国立西洋美術館 東京 右ラファエロ・サンティ『ベルヴェデーレの聖母』 1506年 美術史美術館 ウィーン
これらの絵画をご覧ください。2つとも聖母マリアを主題にした作品です。
これらの絵画を見ていると、「青いマント」が共通して描かれているのがわかりますか? また、左側は少し見えにくいですが「赤い服」が描かれていることも共通しています。
この「青いマント」「赤い服」は、絵画で「聖母マリアが描かれていること」を示す手がかりになっているのです。このように、西洋絵画において絵の中の人物を特定するために描かれる持ち物のことを「アトリビュート」といいます。
昔のヨーロッパでは、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話の話を伝える目的で描かれた絵画がありました。しかし、「描かれているのはどんな場面か」「描き込まれているのは誰か」などの情報を絵だけで伝えるのは難しいのです。絵に矢印を描き入れるわけにもいきません。
▲せっかくの絵が台無し
そのため、描かれている人物を特定するために「その人だと必ず分かるもの」を絵に描きいれる必要があります。
先ほどの例でいえば、「青いマント」や「赤い服」は、聖母マリアのアトリビュートということになります。
身近な例を挙げます。
▲これは誰でしょう
これは「桃太郎の画像」です。では、画像を見てパッと「桃太郎だな」と思った皆さんは、何を観て桃太郎と特定しましたか?
手には「日本一」と書かれた旗を持ち、腰にはきびだんごの袋。この場合、「日本一の旗」や「きびだんご」は、桃太郎を特定するための「アトリビュート」ということになります。
あらゆる人物・神様にアトリビュート
アトリビュートは、絵画で謎を解くための手がかりともいえます。推理小説の探偵が、現場に残された手がかりをもとに事件を解明していくような感じですね。聖母マリア以外にもアトリビュートが存在します。いくつかご紹介します。
アテナ:鎧、兜、フクロウ
ギリシャ神話における知恵と戦いの神様・アテナの場合、「鎧」や「兜」、彼女の使者である「フクロウ」などがアトリビュートとなります。下の絵画をよく見ると腕のあたりにフクロウが描かれていますよ。
▲グスタフ・クリムト『パラス・アテナ』
ペテロ:鍵
こちらは新約聖書に登場する使徒のペテロを描いた絵画です。ぺテロのアトリビュートは「鍵」です。こちらの絵画でもペテロが鍵を握っていますよね。
▲ピーテル・パウル・ルーベンス『聖ペテロ(十二使徒)』
ダヴィデ:剣、投石器、ゴリアテの首
ダヴィデは巨人ゴリアテと戦い勝利を収めたイスラエルの英雄です。ダヴィデの場合は戦いで用いた「剣」や「投石器」、「ゴリアテの首」がアトリビュートとなります。
▲グイド・レーニ『ゴリアテの首を持つダヴィデ』
アトリビュートを知れば、絵画を見るのがもっと楽しくなる!
このように絵画を見る時に、まるで「謎解きをする」ように細かいところをいろいろ観察すると、今までよりも深く絵画を理解することができます。
アトリビュートは、神話の世界を絵の形で表現するためにはとても重要なものです。この記事で紹介したほかにもたくさんのアトリビュートがあるので、ぜひ美術館や絵画の本を見ながら楽しんでみてください!
絵画を見る時にはアトリビュートに注目して鑑賞してみてはいかがでしょうか。きっとより作品の魅力が増すと思いますよ。
それでは、最後に復習のクイズを1つ!
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