現代の美術解剖学
正確さが生む躍動感
さて、次は現代に目を向けてみましょう。
美術解剖学はもともと、絵画や彫刻のための基礎教養として美術学校に導入されました。しかし、現代では漫画やイラスト、アニメ、ゲームといった人体を表現する機会が多いジャンルのクリエイターに需要があります。
人のイラストを描くときによくパーツごとに分けられた下書きを目にすることがあると思います。

この下書きにはどんな意味があるのでしょうか?
また、傾きやひねりも不自然でないか確認しやすくなります。
アニメや漫画などに登場する人物は、魔法や技が使えたりと視覚的に楽しめるように動きが大きい傾向にあります。そこで、人体の構造が破綻しないように解剖の知識が活きるのです。

どのイラストの人物もリアルで動きがあって見ていて楽しいですね!
知識ありきのデフォルメ
先ほどのインタビューの中で「デフォルメ」という言葉が出てきました。ちびキャラやミニキャラといったデフォルメされた人体は、実際の人体の比率とはかなり異なります。しかし、あまり違和感はありませんよね。

よく見てみると関節の可動域やひねり度合い、傾きなど現実の人体構造に忠実なところもあります。実は、デフォルメは対象を意識的に変形させていることがほとんどです。
私もたくさん練習してきましたし、今も勉強中です!
形を取捨選択したり、変形を上手にコントロールするのは、もとの形をよく知っているからこそできることなのですね!
奇妙さを逆手に取る
ところで、みなさんは漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する独特なポーズ、「ジョジョ立ち」をご存じでしょうか?
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人体の表面の起伏には違和感がありませんが、なぜか奇妙な印象を持ちます。実は、この「ジョジョ立ち」は、実際の人体を参考に描かれているのですが、関節を人間の構造的にあり得ないところまでひねりあげ、誇張して描かれているのです。
『ジョジョの奇妙な冒険』の作者である荒木飛呂彦さんは、現実とファンタジーの両方を描こうとした結果、実際にはあり得ない、日常からかけ離れたポージングにしたと発言されたことがあります。
ファンタジーが人体の構造に落とし込まれているというのがとても斬新ですね!
まとめ
美術解剖学は、解剖の知識によって人体に対する観察眼を養うことを目的としています。
美術解剖学を学べば、人体が描かれた作品の見方が変わるのはもちろん、その知識と観察眼で人体の描き方も変わり、絵を描くのが今よりうまくなれるかもしれません。
この記事を読んだあとに美術館を訪れたら、これまでとは違った視点で人物や動物が描かれた作品を眺めている自分に気づくことがあるかもしれませんね。
イラスト協力:無空りら
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