こんにちは、イデです。いきなりですが、問題です。
間違えた人のなかには、「だって使ったことがない!」と思っている人も多いはず。私も小学校で習って以来、日常生活で見たことがありません。
なぜ日常的に使わない「デシリットル」を小学校で習うのか、教育課程の基準となる「学習指導要領」を示している文部科学省(以下、文科省)に聞いてみました。また、実際にデシリットルを使っている業界を発見し、その経緯も聞きました。
なぜデシリットルを学ぶのか、文科省に聞いた
文科省が告示する学習指導要領(2020年度実施)で、「デシリットル」はリットルやミリリットルと同じく、小学2年生の算数で習う内容に含まれています。
なぜ、小学校でふだん使わない「デシリットル」を習うのでしょうか。文科省にその理由を尋ねてみました。
リットルやミリリットルなどの普遍単位の必要性を理解するとともに、目的に応じて単位を使い分けることができるようにする、というのが目的です。
学習指導要領でも、「普遍単位を用いることの必要性に気付かせ、単位の意味について理解させる」「目的に応じた単位で量の大きさを的確に表現したり比べたりする」などのねらいが書かれています。
それにしても、デシリットルはリットルやミリリットルと比べても、普段使う機会が少ないように思いますが……。
身の回りで使う単位が適切かを判断するという点で、たとえば、1Lで表現できるところを1000mLと言うことはあまりないですよね。
かさの単位にはmLやLだけでなく、dLなどさまざまなバリエーションがあるなかで、目的に応じた的確な単位の使い分けをする力を身につけるねらいがあります。
つまり、目的に応じて使い分けができることを学ぶために、デシリットルが登場するということですね。担当者の話を聞くと、「さまざまな選択肢のなかから、場面に応じて適切なものを選べるようになる」というのは算数に限らない普遍的な能力であるようにも思います。
ちなみに、担当者に「デシリットルを使うケースとしてどんな場面を想定していますか?」と聞いたところ、「学習指導要領では具体的な利用場面を示しているわけではないため、お答えするのは難しい」とのこと。しかし、学習指導要領をもとに作られている教科書をめくってみても、身の回りのものの例として登場するのは「L」や「mL」ばかりです。
一体デシリットルはどこで使われているのでしょうか?
デシリットルはここで使われていた!
デシリットルが使われているところを探してみると、見つけました。そのひとつが、野菜の種の販売単位です。種が1dLの単位で販売されています。
なぜデシリットルを使っているのか、種苗を扱う企業の業界団体、一般社団法人日本種苗協会に問い合わせてみました。
協会の担当者によると、穀物や種子は乾燥などで重量が変わりやすい一方、体積は変化しづらいため、体積で計量することが多いそうです。しかし、どの単位を使うかは種苗会社によって異なり、デシリットルが使われている経緯についても「わかりません」とのことでした。
そこで、実際に種子を販売しているタキイ種苗の担当者にお話をお聞きしました。
担当者によると、デシリットルは「タネを1
タキイ種苗の社史には 「甘藍(キャベツ)は、1勺入り、白菜は1勺入りと1合入りで販売されていたが、やがて実施されるメートル法に先んじて、(昭和)33年秋からは甘藍は20mL入りと、白菜は、20mL入りと2dL入りとされた」と書かれていることも教えてもらいました。
昔使われていた1合に近い単位ということで、デシリットルという単位に白羽の矢が立ったんですね。使われることがないと思っていたデシリットルですが、思わぬ形で採用されていました。
ほかにも医療の分野では、デシリットルは血液中に存在する物質の成分量の単位としても使われる場面もあるようです。その物質が血液中にどれくらい含まれているのかを〇mg/dLという単位で表すことがあります。デシリットルは私たちの知らないところでも活躍していたんですね。
「使わないもの」にも気づきがあった
デシリットルというほとんど使われない単位を学ぶことは、実生活にはあまり役に立たないことかもしれません。しかし、デシリットルがリットルの「10分の1」を表していることを知っていると、「デシベル」という音の単位も「ベル」という単位の10分の1であることに気づくことができます。
この気づきが積み重なると、生活の中での「面白い」をたくさん見つけることができます。学校で習う「これ役に立つの?」ということも、そのあとの人生をより豊かにしてくれるかもしれません。
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