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こんにちは。京都大学2年生の松﨑颯樹さつきです。QuizKnockでは作問チームに所属し、クイズの問題作成などを担当しています。

QuizKnockの記事に出るのは、一昨年にクイズ大会「High School Quiz Battle WHAT 2022」で優勝したとき以来です。あれから2年、今度はQuizKnockのスタッフとしてコラムを書くことになりました。

▲「WHAT」優勝時のインタビュー

今回は、今年3月に私が優勝した大会「abc the22nd」についてお話しします。

▲大学1年生にして“学生ナンバーワン”の称号を手にした

悔しさの残った高校時代

学生を対象とした日本最大級の競技クイズ大会・abcに私が初めて参加したのは、新型コロナウイルスが日本で流行し始めた2020年の夏。高校1年生のときでした。

当時は第一関門となる筆記クイズの通過を目標としており、それ自体は達成することができましたが、続く2回戦:早押しクイズのラウンドでは全く歯が立ちませんでした。

高校2年生のときには筆記クイズで2位を獲得し、前年に悔しい思いをした2回戦も突破。しかし、上位9名が進出できる準決勝の一歩手前で敗退となり、大学進学後には更に上のラウンドで勝負したいと思うようになりました。

▲手応えも、悔しさも味わった高校時代

リベンジに懸けた大学1年。しかし……

2024年3月、大学進学後最初のリベンジの機会となったabc the22nd。結果を出すためにかなりの準備を行い、1回戦の筆記クイズで1位を獲得できました。

そのまま危なげなく2回戦に勝利したものの、3回戦では「勝ち抜けまで残り1問」のところから正解を出すことができずに敗退してしまいました。またしても準決勝の前で壁に阻まれ、敗者復活戦に参加することとなったのです

▲1回戦、830人の頂点に。最高のスタートを切ったものの……

ラストチャンス、隣には盟友の姿が

敗者復活戦は、約800人からたった1人だけが勝ち抜けられる狭き門。厳しい予選を乗り越え、私を含む7名が敗者復活の最終ラウンド:5〇1×クイズに駒を進めました。

5〇1×クイズ:5問正解で勝ち抜け、1問不正解で即失格となるルール。誤答に細心の注意を払う慎重なプレースタイルが求められる。

そして隣の席には、私がクイズを始めた中学生の頃から7年近く苦楽をともにしてきたサークルの先輩・木村さんがいました。

▲左が木村さん。「盟友」と大舞台で隣の席に

木村さんとは何度も何度も一緒にクイズをしてきたものの、abcの同じ舞台上で戦うのはこれが初めて。1枠を争う敗者復活戦でやっと機会に恵まれたというのも、何かの巡り合わせではないかと思いました。

クイズが始まる直前、「ここを勝った方が今日優勝するかもね。どっちかは勝ちたいね」という話を2人でしたことを覚えています。

そして訪れた「思い出の1問」

5〇1×クイズが始まります。私は序盤に先述の「WHAT2022」のウィニングアンサーでもあった「ルノワール」の類題を正解するなど、幸先よく3問を先取しました。

▲問題の引きにも恵まれ、先行する展開に(画像は「WHAT 2022」より)

私が有利な状況に立ったことで周りの選手も早押しのギアを上げ始め、その中で木村さんは非常に惜しい誤答で失格となってしまいます

私が「絶対勝つから応援して」と声をかけると、隣の彼は悔しさもあっただろうに、すぐに私を応援する態勢へと切り替えてくれました。

木村さんが脱落した直後、私は4つ目の正解を積み、勝ち抜けにリーチをかけました。ところがその後足踏みが続き、いつの間にか相手も勝ち抜けリーチの状態となっていました。

絶体絶命の状況に心が折れそうでしたが、ここで隣の木村さんが「絶対(早押しボタンを)点けに行こう。一歩も引いたらあかんで」と言ってくれ、次の問題に全ての神経を集中させる準備ができました。

そうして迎えた次の問題。

「中国のお酒、桂花けいか……」

僅かな差でボタンを着けたのは私でした。

間違えたら即敗退という状況。極限の緊張の中、何個か浮かんだ候補の中から、一番自信のある答えを発しました。

「キンモクセイ!!!」

会場には正解音が鳴り響きました。

隣の木村さんが私を抱きしめて、とても喜んでくれたことを今でも思い出します。涙が溢れるくらいには嬉しいことでした。

準決勝が始まる直前、私のabcへの挑戦がまだ終わらないこと、敗者復活戦で先に敗れた木村さんの思いを継げたこと、そしてこの先の準決勝・決勝にも思いを引き継がないといけないことを考えると緊張しましたが、一度負けた分、吹っ切れて押そうと決めました。そして準決勝でも快勝し、決勝へ進むことになります。

再び背中を押され、念願の優勝

abcの決勝進出者は、2名の「セコンド」(選手と作戦を話し合ったりするサポーター)をつけることができます。私は色々な大会で一緒にクイズをし、他大の学生ながら仲良くなった今井さん、そしてもちろん木村さんを呼びました

3人のうち、3セットを先取した選手が優勝となる決勝戦。序盤の2セットを相手の2人に1つずつ取られる展開となり、「負けるのかな……」という嫌な予感もちらつきましたが、セコンドの2人の励ましもあって気持ちを切り替えることができました。

そこからは3セットを連続で獲得することができ、私はabc the22ndの優勝者となりました

セコンドの2人もとても喜んでくれて、感無量でした。

敗者復活からの優勝は、22回を数えるabcの歴史で初めてのことだそうです。

一度負けて悔しい思い、しんどい思いはしたけれど、その分だけ思い出も増え、身近にいる人たちの思いに触れられたことは何にも代えがたい思い出だと感じます。「一度負けて良かった」と、少し思うくらいには。

ここまで書いて気づきましたが、「思い出のクイズ」というより「クイズの思い出」ですね。お読みいただき、ありがとうございました。

〜abc the22ndの思い出〜

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