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内閣改造と、私たちの暮らし

「内閣改造なんて結局政治の話で、私たちの生活にはそんなに関係ないんじゃないの?」

そんなこともない。たとえば、財務大臣の発言や姿勢は世界からも注目され、相場の動きに直結する。どんな考え方の人が財務大臣になるかで、輸入品の価格やガソリン代、海外旅行の費用……私たちのお財布事情も変わってくるのだ。

記録的な円安が続く昨今だが、現職の片山さつき財務大臣については「アメリカと日本の経済政策が相容れない難しい状況のなか、なんとか舵取りができている」という評価もある。続投を見込む報道も出ているだけに、もしスタンスの異なる人に交代となれば、一気に円高あるいは円安が進む可能性があるだろう。

▲財務省庁舎。誰が財務大臣になるかは、めぐりめぐって私たちの財布にも跳ね返る

また今回は、自民党と連立政権を組む日本維新の会からの入閣が有力な点にも注目だ。維新がどのポストで入るかは、副首都構想(大阪などに首都機能の一部を担う「副首都」を設ける構想)をはじめ、今後の政策の行方に関わってくる。

このほか、女性閣僚の人数なども、報道では話題になるだろう。どれも突き詰めれば、この人事で、首相は何を進めようとしているのか? という問いに行き着く話だ。

結局、私たちは政治の何を見ればいいの?

内閣改造と暮らしの関わりについても解説したが、それでも「やっぱり政治の話なんて、そんなには私たちとは関係ないかも」と感じた方もいるだろう。

それは、半分は事実だ。大臣も自民党の党役員も、私たちが投票用紙に名前を書いて選ぶわけではない。誰が入り、誰が外れるかの決定は有権者ではなく、党内のバランスをもとに判断されている。

だからつい、「一般国民の目線」対「永田町政治家側の論理」という構図で整理したくもなる。前者が正しくて、後者が古くて閉じている、と。わかりやすいし、実際そう報じられることも多い。ただその二項対立だけでニュースを眺めていると、見落とすものがある。

大臣や役員をうまく割り振り、総務会で全会一致になるまで政策を話し合う。ここまで見てきた手続きは確かに面倒で、遅くて、身内の事情が透けて見える。けれど裏を返せば、「誰か一人の独断では物事が決まらない」ようにするための仕組みでもある。世界には、トップが誰にも相談せず、一晩で重要な政策を決めてしまえる国もある。決定は速いが、その速さを止められる人がどこにもいない、ということと同意でもある。

民主主義というシステムを守るには、それなりのコストがかかるのだ。イギリスの元首相、ウィンストン・チャーチルはこんな言葉を残している。

Democracy is the worst form of government, except for all those other forms that have been tried from time to time.


(筆者訳:民主主義は最悪の政治形態である。ただし、これまで試されてきた他のすべての政治形態を除いては。

▲ウィンストン・チャーチル

だからといって、政治の側に免罪符があるわけではない。「政治とカネ」の問題をはじめ、ルールや慣行は時代ごとに変わってきたし、その都度問題も起こしてきた。政治の論理は、一般国民の目線に近づくよう、絶えず変わり続けなければならない。

そして、その変化をつくる力は、最終的には私たち有権者の側からしか出てこない。政治家が最も気にするのは、見られていること、そして次の選挙で当選できるかどうかだ。「無関心」はお得な態度のようで、後で一番高いツケを払うことになるかもしれない。見る人がいなくなった瞬間、システムを続けるためのコストは払われるのに、人々へのリターンが返ってこなくなるからだ。

▲次の選挙に対して、ぜひ興味を持って注目してほしい

だから9月、人事速報が流れたら、大臣や自民党の党役員がどんな人なのか、少しだけでも調べてみてほしい。ややマニアックかもしれないが、私たちが民主主義に払っているコストの使い道を確かめる、いちばん手軽な方法でもあるのだから。


記事への感想・ご意見、取り上げてほしいテーマを #ニュース解体中 でぜひ教えてください。次回もお楽しみに!

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【画像出典(画像を一部加工しています)】
第2次高市内閣:Wikimedia Commons 内閣広報室 CC BY 4.0
財務大臣引き継ぎ式:Wikimedia Commons 財務省 CC BY 4.0
高市首相の国会演説:Wikimedia Commons 内閣広報室 CC BY 4.0
自民党本部:Wikimedia Commons Lombroso CC BY-SA 4.0
田中角栄元首相:Wikimedia Commons 首相官邸ホームページ CC BY 4.0
財務省庁舎:Wikimedia Commons Kakidai CC BY-SA 4.0
国会議事堂:Wikimedia Commons Wiiii CC BY-SA 3.0
選挙ポスター掲示板:Wikimedia Commons Ryo FUKAsawa CC BY 2.0

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この記事を書いた人

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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