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前ページ:はじめから挑戦したい方はこちらへ! 以下は問題の答えと解説です

解説

正解は、サンドロ・ボッティチェリでした。

▲『東方三博士の礼拝』に描かれたボッティチェリの自画像

ヒント1:ダ・ヴィンチと同じ工房におり、彼からライバル視されていたという説も

ボッティチェリは当初、フィリッポ・リッピという画家に師事して絵画の修業を始めましたが、リッピが活動拠点を別の街に移したことを機に、フィレンツェで活動していたヴェロッキオの工房に出入りするようになります。このヴェロッキオの工房で同じく修行をしていたのが、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチでした。

ダ・ヴィンチは同世代の他の画家にはほとんど興味を抱かなかったとされていますが、そんな彼の手記の中には、画家として唯一ボッティチェリの名前が挙がっているのです。このことから、ダ・ヴィンチはボッティチェリをライバル視していたのではないか、という見方もあります。

ちなみに、ヴェロッキオの代表作『キリストの洗礼』には、キリストと洗礼者ヨハネの他に2体の天使が描かれています。このうち左の天使はダ・ヴィンチによって描かれたとされていますが、実は右側の天使はボッティチェリが描いたのではないか、という説もあるのです。たとえ本人たちは互いをライバル視していたとしても、2人の弟子の才能に期待したヴェロッキオが天使を描き分けさせたかもしれないと思うと、なんだか感動的ではありませんか?

▲ヴェロッキオ『キリストの洗礼』。左側の天使が美しすぎて逆にミスマッチ

ヒント2:ダンテ『神曲』の挿絵を描いた

▲ダンテは地獄を大地の下に漏斗ろうと状に広がる暗黒世界として描いた

イタリア初期ルネサンスの代表的画家であるボッティチェリですが、晩年は教会の腐敗を批判したサヴォナローラという修道士の影響を受け、神秘主義(神との直接的・内面的一致を重要視する思想)に傾倒します。

彼はダンテの『神曲』の挿絵を手掛けることとなりますが、思想の変化は画風にも影響を与えており、中世の哲学・思想の集大成たる『神曲』にふさわしい、神秘的で硬質な挿絵に仕上がっています。

ちなみに『神曲』の影響を受けた作品としては、オーギュスト・ロダンの『地獄の門』がよく知られています。

▲『考える人』のもとになった事でも知られる、ロダンの『地獄の門』 via Wikimedia Commons Roland zh CC BY-SA 3.0

ヒント3:代表作『ヴィーナスの誕生』

前述のように晩年は神秘的な画風に変化したボッティチェリですが、元々は美しい線描と優美で装飾的な色彩を特徴とする画家でした。そんな彼の代表作が『ヴィーナスの誕生』です。

この『ヴィーナスの誕生』、実はそのタイトルに反して、ヴィーナス誕生の瞬間を描いているわけではありません。ヴィーナスは海の泡から生まれた後、西風ゼフュロス(画面左側で風を吹かせている男神)に吹かれ、キプロス島へと運ばれます。ここで描かれているのは、島に辿り着いたヴィーナスが、季節の女神ホーラ(画面右)によって美しく装われている瞬間なのです。ちなみにこのホーラの動きは、『キリストの洗礼』のヨハネの動作にそっくりですね。

また、線的画風が特徴であるボッティチェリに対して、先のヒントでも登場したダ・ヴィンチは「スフマート」という輪郭をぼかす技法を重視していました。ボッティチェリとダ・ヴィンチは、画風においてもライバル的立ち位置にいたのかもしれません。


余談ですが、ボッティチェリという名前は「小さい樽」を意味する「ボッティチェロ」が由来になっています。兄が大食いで太っていたことからこのあだ名で呼ばれ、それが弟にも派生したそうです。兄がジャイアンだから妹もジャイ子、みたいな事なのでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ次回の「今日の一問・美術編」にも挑戦してくださいね!

【前回の美術問題はこちら】

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この記事を書いた人

Raven

京都大学法学部卒。「ONE WORD, NEW DOOR」を座右の銘に、皆様が新たな世界への扉を開けるような記事を書くべく努力してきました。よければ覗いてみてください。

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