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私たちが普段読む新聞が世間に出回るまでには、多くの人の手が関わっています。

まず思い浮かべるのは、おそらく取材記者でしょう。取材のために各地を朝晩走り回る様子は、容易に想像がつきます。

取材記者が書いた原稿を編集し、整理して紙面に配置していくのが整理記者。文章量を調整したり、見出しを付けたりと、こちらも重要な仕事です。

こうしてできあがった新聞が私たちのもとに……? いやいや、大切な仕事を忘れていますよ。

新聞界のゴールキーパーこと、校閲記者。2016年、校閲をテーマにしたドラマが放送されたことで注目を集めました。

校閲記者は、紙面上のあらゆる誤りを指摘し、正しく直すのが仕事。何十個と誤りを見つけたとしても、ひとつでも見逃してしまえば台無しです。

そんな校閲記者の仕事、少し体験してみましょう。

誤りはいくつある?

以下の文章に、誤りはいくつあるでしょうか? すべて指摘して、正しく直してみてください。

今日、2月11日は建国記念日であるととともに、姉と義兄の結婚記念日でもある。3年前の今日、あいにくの雨模様の中、姉は入籍した。同日に行われた結婚式では、友人による花向けの言葉に、姉は外の天気と同じように涙を流していた。結婚3年目を迎えた今日、姉は赤飯を炊くために餅米を賈いに行った。

さて、いくつ見つけられましたか? わざと誤りを敷き詰めた文章なので、内容が不自然なのは許してくださいね。

では、ひとつひとつ見ていきましょう。

「建国記念日」→「建国記念の日」

祝日の名前は、祝日法によってきちんと定められています。5月3日は「憲法記念日」ですが、2月11日は「建国記念の日」と、「の」が入ります。

「あるととともに」→「あるとともに」

イージーミスです。このように不要な文字が入ってしまうことを衍字(えんじ)と言います。「脱字」の反対ですね。

「雨模様」→「空模様」

「雨模様」の本来の意味は、今にも雨が降りそうな曇り空のこと。続く文章から察すると、実際に雨が降っているようなので、「雨模様」という表現は適しません。

「入籍した」→「婚姻届を出した」

現在の戸籍法では、婚姻に際して妻が夫の籍に入るのではなく、2人の新しい戸籍を作ることになっています。よって、ほとんどの場合、「入籍」という表現は誤りということになります。

「花向け」→「はなむけ」

餞別を意味する「はなむけ」。元はといえば旅立つ際に馬の鼻を行き先に向けたことに由来するので、「花向け」という表記は間違いです。

「結婚3年目」→「結婚から丸3年」

3年前に結婚したのですから、今日からは4年目に突入します。3年であることを言いたいのなら、「目」をつける必要はありません。

「餅米」→「もち米」

赤飯や餅の材料となる「もち米」は、漢字で書くと「糯米」。「糯」の字は難しいので、ひらがなにするのが無難でしょう。

「賈いに行った」→「買いに行った」

ごめんなさい、少し無理のある誤りでしたね。でも一字一字が間違っていないか確かめるのも校閻記者の仕事。

ほら、今の「校閻」の誤りには気付きましたか? 正しくは「校閲」ですよ。

というわけで、誤りは全部で8つでした。私が無意識の誤りを犯していなければ、ですが。

もちろん、「それくらい見逃しても良いんじゃないの?」と思える誤りもあります。しかし、新聞は事実を伝えるメディア。できる限り正確な表現をしなければ、という思いのもとに、校閲記者の皆さんは今日も一生懸命紙面を守っているのです。

◇参考文献
毎日新聞校閲グループ(2017)『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』毎日新聞出版

 

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この記事を書いた人

カワカミタクロウ

東大文学部卒、東大クイズ研究会OB。

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