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サイエンスコミュニケーターである須貝駿貴が、理科にまつわる情報や実験をTikTokで紹介中! Webでの連載「須貝研究室の定例ゼミ」では、動画で紹介した内容について、ちょっとだけ詳しくなれる情報をお届けしていきます。

今回の動画では、視聴者の方からの「青色発光ダイオード(青色LED)」にまつわる質問にお答えしました。

赤、緑はあったのに……開発が遅れた青色LED

赤色と緑色のLEDは1960年代には実用化のレベルに達していたにもかかわらず、青色LEDが製品化されたのは1993年のこと。青色LED開発の業績が認められ、2014年に赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんがノーベル物理学賞を受賞しました。なぜ青色LEDは実用化が難しかったのでしょうか?

動画が表示されない場合はこちらからどうぞ。

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そもそもなぜ「青色LED」が必要だった?

▲青色の発光ダイオード(LED) via Wikimedia Commons Gussisaurio CC BY-SA 3.0(画像をトリミングしています)

「光の三原色」と呼ばれる赤色・緑色・青色の3色を混ぜ合わせると、あらゆる色を表現できるようになります。このうち、赤色緑色のLEDは1960年代にすでに開発されており、残りの青色のLEDが実用化されれば、フルカラーの電光掲示板やテレビのスクリーンを作ることができると期待され、さまざまな研究者が開発に取り組んできました。

また、LEDは消費電力が白熱灯や蛍光灯に比べて少なく省エネになります。さらには長寿命であるため、長期的に見たコストカットにもつながります。

実用化が難しかったワケ

青色LEDの実用化が難しかったのは、材料となる半導体を高い品質で作ることが難しかったためです。

過去に青色LEDの材料の候補とされていた物質は、発光しにくいものだったり、使っているうちに劣化して明るさが低下してしまうものだったりと、実用化に向いていませんでした。

現在青色LEDに用いられている窒化ガリウムGaN)に注目した研究者もいた一方、当時は、

(1)窒化ガリウムの高品質な結晶を作る技術がなかったこと
(2)LEDの発光に必要な2つの型(p型、n型)の半導体うち、p型は窒化ガリウムでは原理的に作れないのではないかといわれていたこと

が大きな問題でした。

▲LEDはp型半導体とn型半導体を接合して作られている via Wikimedia Commons CC BY-SA 2.5

どのように解決したの?

(1)高品質な窒化ガリウムの結晶を作るために

高品質な窒化ガリウムの結晶を作るのが難しかった理由には、結晶をつくる基板となるサファイアと窒化ガリウムの単位格子(結晶をつくる空間格子の最小単位)の大きさが違うことが挙げられます。

▲単位格子の大きさが違うと、結晶がきれいに成長しない

当時名古屋大学の大学院生で、窒化ガリウムの結晶を作る研究をしていた天野氏は、ある日装置の不調によって普段とは異なる温度が低い環境で実験をしました。その実験がきっかけで、低温で成長させた窒化アルミニウムの薄い層の上に、高品質な結晶をつくることができるとわかったのです。

▲この発見により、高品質な窒化ガリウムの単結晶が作れるように

(2)p型の窒化ガリウムを作るために

また、原理的に作れないのではといわれていたp型の実現にも、天野氏の研究がありました。天野氏は、窒化ガリウムの結晶に電子ビームを当てると性質が変化し、結晶があたかもp型であるかのような性質を示すことを発見。これらの研究により、窒化ガリウムによる青色LEDは、実現に向けて進んでいきました。

今では青色LEDに窒化ガリウムや、インジウム-ガリウム-窒素が使われていますが、他にもセレン化亜鉛や、炭化ケイ素が候補物質だったそう。

特に、セレン化亜鉛が主流のなかで、窒化ガリウムの研究を進めた背景に「新規性」を求めるアカデミアの競争意識が見え隠れしますね。

青色LEDはこんなところで活用されてます

青色LEDが実用化可能なレベルになり、赤色、緑色と合わせて光の3原色が揃いました。これにより、限りなく自然光に近い白色のLEDを作ることができるようになりました。近年ではLEDが家庭用の照明にも使われています。

また、テレビ電光掲示板はLEDによるフルカラーが実現し、信号機もLED化が進んでいます。

▲LEDの信号機

次回もお楽しみに!

須貝駿貴のTikTokアカウントでは、ノーベル賞にまつわる研究の1分解説や視聴者の方からのご質問にも回答しています! ぜひチェックしてみてくださいね。

執筆協力:鞠乃

サムネイル画像出典:Wikimedia Commons Gussisaurio CC BY-SA 3.0(画像をトリミングしています)

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