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問題です。

入浴時間が短いことを、ある鳥の名前を使って「何の行水」というでしょう?

シンキングタイムの間にご挨拶。こんにちは、あさぬまです。

問題の正解は「からすの行水」。タイトルでわかっちゃいますね。

テレビ観たさにからすの行水をし、よく怒られていた

では、もうひとつ。

カラスの行水(つまり水浴び)する時間って、本当に短いですか?

答え。私はわかりません(聞いておいてごめん)。そもそも、カラスが行水しているところを見たことがないんですよね。

以前山森さんが取っていたアンケートでも、ほとんどの人は見たことがないようでした。

「ほんとにカラスは行水の時間が短いの?」「短いって、何を基準にして言ってるの?」

あれこれ湯船で考えているとからすの行水どころかのぼせてしまいそうだったので、さっそく調べてみることにしました。

カラスの行水、実際に見る

カラスが実際に水浴びしてるところを見て確かめよう! そんなわけで、カラスがたくさんいるという、東京の代々木公園に観察に行ってきました。

とある冬の日の代々木公園。寒い

公園の中央にある噴水池に行ってみると、周辺の木にカラスがたくさん止まっていました。寒さを我慢しながら待つこと十数分。カラスたちが水辺に降りてきて水浴びを始めました。これが「カラスの行水」! 初めて見ました。嬉しい。

これが「カラスの行水」か〜

羽で水を叩いてしぶきを上げながら水浴びをしているようです。これを数回行った後、陸に上がって体を震わせながら水を飛ばすと、すぐに飛び立っていきました。ここまでかかった時間は、30秒ほど。何回か目撃したので時間を測ってみた結果、長くて60秒ほどでした。

もっとも長かったカラスの行水(筆者撮影)

本当に短いかわからない

ここで生まれる疑問。果たして、これって短いの……?

確かに、どのカラスも水を浴びて出てきただけで、毛づくろいなどをする様子はありませんでした。水辺にいたのも、水浴びをする数十秒間だけです。人間の私からするとめちゃくちゃ短いし、なんだかぞんざいに済ませている気もする。でも、カラスのサイズ感からすると極端に短いというわけでもなさそうで……。

他の鳥と比べたら短いのかな?

代々木公園には他にも色々な鳥がいたので比較できるかと思ったのですが、水浴びをしているところを目撃することはできず。「他の鳥に比べて水浴びが短い」ということは、今回の観察ではわかりませんでした

その後インターネットで調べたり、鳥についての本を読んだり、詳しい方に訊いてみたりしましたが、カラスの水浴びが短いという確かな情報は得られず。残念。

いつから使われている?

カラスの水浴びが短いということをみんなが知っているわけではない。それならどうしてこの慣用句が定着したんだろう。そもそも、「からすの行水」っていつから使われてるの?

「からすの行水」の使用例を過去に遡って調べてみると、今回調べたなかで最も古い記録は江戸時代のものでした。当時は、入浴時間に限らずあらゆることに対して時間をかけずいい加減に行うことを指した言葉だったようです。

カラスの悲しいエピソード?

使用されている文章をいくつか読んでいると、ある発見をしました。江戸時代後期に刊行された黄表紙(※)『烏行水諺草(からすのぎょうずいことわざぐさ)』に、「からすの行水」に関するこんな記述が。

※黄表紙:江戸時代の半ばごろから流行した、絵が入った滑稽な読み物。

むくろんじは三年磨いても白くならぬといふ通り、烏もいくら洗つても白くはならず。そこをからすも諦めて行水を忽ちしまふ。湯上がりの早いことを烏の行水といふなり

「むくろんじ」とはムクロジという高木のことで、その種子の色は真っ黒です。私たちの身の回りでは、お正月のはねつきに使う羽根の玉の部分に利用されています。

黒い玉がムクロジの種

この部分では、「真っ黒なムクロジの実を3年磨いても白くならないのと同じで、カラスも時間をかけて洗ったところで白く綺麗にはならない。だからカラスは諦めて、水浴びをさっとすませるようになった。風呂からすぐ出ることを烏の行水というのだ」と書かれているのです。このお話はフィクションですが、それにしたって切なすぎない……?

物語の表現が実生活に定着したか

テレビもラジオもない江戸時代、出版物は数少ないメディアのひとつでした。黄表紙は、絵がメインになっていて読みやすく、江戸時代後半に多くの人に親しまれた本のジャンルです。人々の娯楽としてこの本が手に取られ、面白いお話として人々の記憶に残り、定着したのかもしれません。

もちろんこれは確固たる根拠があるわけではないので真偽はわかりません。しかし、これが理由で今日までこの言葉が残っているのだとしたら、かなり面白いですね。

身近な「トリの行水」情報求む!

というわけで、「からすの行水」について面白いお話を知ることはできたものの、カラスが実際に他の鳥に比べて水浴びをする時間が短いかは結局わかりませんでした。よって、私の調査はまだ続きそうです。

鳥が水浴びしているところを見たら、どのくらいの時間だったか、ぜひ教えてください。

この記事を書いた人

あさぬま

千葉大学4年、日本語について学んでいます。趣味は自転車で日本中を旅すること。自分の知識や経験をもとに、臨場感のある楽しい記事を書くことが目標です。

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