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こんにちは、はぶきです。

突然ですが、皆さんは「不協和音」とは何なのかご存知でしょうか。

「不協和音」と言うと、欅坂46の『不協和音』を思い出す方もいるかもしれません。曲中では、「不協和音を僕は恐れたりしない」「不協和音で既成概念を壊せ」と歌われています。

もちろん歌詞は比喩表現ですが、実際の不協和音はどうなのでしょう。そこまで恐ろしく、破壊力を持つものなのでしょうか。

不協和音とは

「不協和音」とは、「粗雑感があり心地よく聞こえない2つ以上の音のこと」をいいます。反対に、「心地よく聞こえる2つ以上の音のこと」を「協和音」といいます。音の重なりは、この協和音と不協和音のどちらかに当てはめることができます。

※不協和音のような耳に痛い音の重なりのことを、音楽家はよく「ぶつかる」といいます。以後、「ぶつかる」という言葉で不協和音の響きを表現します。

具体的にはどんな音?

実は、協和音と不協和音の正確な線引きは存在しません。「協和して聞こえたら協和音、そうでなければ不協和音」という、曖昧で個人的な判断基準によるのです。

しかし、多くの場合は音の振動比(周波数の比)が単純であればあるほど協和する、つまり音どうしがよく混ざり合って聞こえるとされています。

「ド」と同音のド〜オクターブ上のドにおける振動比は、このようになっています。

  • ド(同音)……1
  • レ……9/8
  • ミ……5/4
  • ファ……4/3
  • ソ……3/2
  • ラ……5/3
  • シ……15/8
  • ド(オクターブ上)……2

※この表は「純正律」という音律による振動比です。現在は音律として「平均律」がよく用いられますが、1オクターブを12音に均等に分割した「平均律」とは違い、「純正律」は特定の調における和音の響きの美しさに特化しており、各音ごとに距離が違います。
「協和」は音の重なりから生まれるため、ここでは和音の響きを重視し比率が単純化された「純正律」の比を用います。

特に比率の単純なドとファ、ドとソ、ドとオクターブ上のドはかなり溶け合って聞こえ、多くの場合ドに対する協和音として扱われます。反対にこの中では比率が複雑なドとレ、ドとシはぶつかって調和していないように聞こえ、こちらはドに対しての不協和音と言えるでしょう。

ドとミ、ドとラについては、協和音とする扱い方もあれば不協和音とする扱い方もあります。この音程は俗に「ハモる」と言われる音の距離なので、調和して聞こえる方も多いかもしれません。

「ドレミファソラシド」の中では、 両端のドから離れている方が協和しやすいようです。

曲の中での不協和音

綺麗だと感じる曲は世の中に沢山ありますが、実はとても綺麗に感じる曲にも、不協和音はいくつも含まれているのです。

ではなぜ、曲中に不協和音を使用しても違和感がないのでしょうか。

音楽は「緊張」と「弛緩」のくり返し

多くの音楽は、不安を煽ったり盛り上がりを作る「緊張」と、安らぎを持たせたり盛り上がったものを静める「弛緩(しかん)」のくり返しで成り立っています。ほとんどの場合、不協和音は緊張、協和音は弛緩として曲を形づくります。

想像してみていただきたいのですが、皆さんが毎日何も変わらない生活を送ったり、逆に毎日何もかも変わってしまう生活を送るとしたらどうでしょう。毎日が全く同じなのは退屈ですし、毎日が変化の連続では疲れてしまうことは想像がつきますよね。

音楽も同じで、時々緊張するイベントが起こり、時々その緊張から開放されることで心地よく聴くことが出来ます。だから不協和音を曲に使用しても、違和感があるどころか自然に聞こえるのです。

まとめ

不協和音というのは、それ単体で聞くと「耳に痛い」「ぶつかる」と表現される音になってしまいますが、曲中で上手く使われていると曲にメリハリがつき、曲にストーリーが生まれます。不協和音というのはカレーにとってのスパイスみたいなもので、彼らは「不可欠な脇役」なのです。

皆さんも何かの曲に好きな響きがあれば、ぜひ今一度聴き直してみて下さい。その部分だけで聴き直してみると、実は不協和音だったりするかもしれません。

参考文献

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この記事を書いた人

はぶき りさ

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学別科オルガン専修を経て、同大学音楽学部器楽科オルガン専攻2年。世界で何千年も生き続けている「音楽」という文化に、少しでも興味を持ってもらえるような記事を書けたらと思います。よろしくお願いします。

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