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こんにちは、朱野です。ロンドンの大学院でファッションの研究をしていましたが、先日無事に修士課程を修了しました。

……と聞くと、「どうしてファッションの研究を始めたの?」「どのような経緯でロンドンに進学したの?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、わたしが「ロンドンの大学院でファッションを専攻するに至るまで」をお話しします。

わたしは高校時代から将来の道を明確に決めていたわけではなく、成績優秀だったわけでもありません。なんとなく進学した大学で学問の面白さに目覚め、「もしかして大学ってなんでも研究できるんじゃないの?」と気づいたことで、ずっと好きだったファッションを研究することになりました。

行き当たりばったりな大学生活でしたが、みなさんの学生生活にとっても、なにかヒントとなれば嬉しいです。

▲わたしが通ったキャンパス。ロンドンのど真ん中にあり、都会の雑居ビルといった感じ。みなさんがイメージする「ロンドン芸術大学」とは少し違うかも……?

「好き」と向き合った大学生活

わたしは幼い頃から服やおしゃれが大好きで、将来はファッションに関わる仕事をしたいとぼんやり考えていました。一方で、高校時代のわたしにはファッションを学べる学校というと専門学校のイメージしかなく、ファッションの学術研究のことはほとんど知りませんでした。

四年制大学への進学を希望していたこともあり、専門学校ではなく、京都のとある私立大学へと進学しました。

なんとなく入学した大学でしたが、今振り返ると、ここでの時間がファッション研究へと繋がる第一歩だったと思います。

所属していた国際系の学部では、言語とヨーロッパ文化を中心に、幅広い科目を履修することができました。もともと興味のあった美学芸術学や哲学はもちろん、世界史、政治、ジェンダーや環境問題など、様々な分野を横断して学んだことで、関心と教養が広がり、勉強の楽しさに目覚めました。

また指導教官がわたしのファッションへの関心を理解してくれたので、ゼミではファッションをテーマとした課題に取り組むこともできました。鷲田清一(※)のファッションにまつわる著書の書評を書いてみたり、イギリスのファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノについてプレゼンをしたり……。卒業論文では映画衣装をテーマに取り上げました。

※日本の哲学者。特に1980年代末から1990年代にかけて身体とファッションにまつわる著書を数多く手掛け、日本におけるファッション学の先駆者といわれている。

さらにサークルやアルバイトを通して、学問以外の場でもファッションに関わりました。特に明確なビジョンもないままに始まった大学生活でしたが、京都という歴史と文化に富んだ土地で、様々な学問や自分の「好き」と向き合った時間が、今の自分を形作ってくれたと思います。

▲テムズ川と同じくらい、たくさんの思い出がある鴨川

学問の奥深さに気づいたロンドン留学

留学必須の学部だったので、学部時代にも1年間ロンドンの大学に通いました。

▲イギリスで最も高いビル「ザ・シャード」。街並みを始め、古いものと新しいものが共存するところもロンドンの魅力

留学中、毎週たくさんの英語論文を読むことにヒーヒー言いながら、世界各国からやってきた学生と共に勉強する中で、気づいたことがあります。それは「世界中の人があらゆるテーマを多様なアプローチで研究している」ということ。

留学先で特に印象に残っている授業が、「スペクテイターシップ・スタディーズ」という映画の観客を研究する学問です。それまで、映画を観るという行為やそのあとに抱く感想は、個人的な体験や感情であり、それを学術的に研究できるなんて思いもしませんでした。そんな映画鑑賞を、科学、心理学、社会学などの様々な分野に基づいて分析することは、目から鱗が落ちまくりの刺激的な経験でした。

どんな対象でも多様なアプローチで研究できる学問の奥深さを実感したことで、「わたしももっと学問を続けたい」と考えるようになりました。こうして、わたしは大学院への進学を決めたのです。

▲大英図書館。世界最大級の蔵書はもちろん、自習スペースもたくさんあり、アクセスも良いのでよく利用していました。観光客も見学可能

ファッションを研究するため再びロンドンへ

どんなことも研究対象にできると気づいたとき、わたしは「大好きなファッションを研究しよう!」と思いました。

しかしファッションの学術研究は、日本ではまだ盛んではありません。「どうせならより恵まれた環境で学びたい」と思い、ロンドンの大学院へ進学しました。

この時のわたしが迷うことなく、ファッションの専攻と海外への進学を選択できたのも、たまたま進学した大学での経験があったから

幅広い分野を学んだからこそ、学問の面白さに気づくことができましたし、自分が一番興味があるのはファッションだと確信することもできました。

ロンドンの大学院には、留学生はもちろん社会人経験のある生徒も多く、様々なバックグラウンドを持つクラスメイトと共に過ごしてきました。そうした中で、ファッション以外の分野について学んだ経験も、自分の強みになっていると感じます。

▲大好きなヴィクトリア&アルバート美術館のカフェにて。美術展に行ったりショッピングをしたり美味しいものを食べたり、友人と過ごす休日が留学生活のなによりの息抜きでした

海外への進学でしばしばネックとなるのは語学試験のスコアですが、こればかりは大学で語学の授業を真面目に受けていたことが功を奏しました。

遠回りも悪くない

はっきりとしたビジョンもなく、なんとなく始まった大学生活。遠回りしながらも、結果的には、自分の一番好きなことを学べる最高の環境にたどり着きました。

高校時代から自分のやりたいことが明確で、そのためのプランをしっかり描けるのも素晴らしいことです。ただ、そうじゃなくても、置かれた場所でいろいろな人と交流したり勉強したり趣味に打ち込んだりすることで、自然と開けてくる道もあるのではないかと思います。

特に大学は、自分の学ぼうという姿勢次第でたくさんの機会に恵まれる場所であり、自分のやりたいことを発信すれば、それをサポートしてくれる人にも出会えるはずです。

コロナ禍での進学や勉学には苦労も多いと思いますが、みなさんの大学生活も充実したものであるよう、応援しています。


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この記事を書いた人

朱野

ロンドン芸術大学での修士課程を終え、Master of Artsになりました。日本ではまだ馴染みの薄いファッションの学術研究の面白さを、みなさんとシェアできれば嬉しいです。ちなみにロンドンにも美味しい食べ物たくさんあります。

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